2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月27日

 米AEI日本研究部長のオースリンが、安倍総理の靖国参拝は中韓との関係改善断念を覚悟してのことであり、尖閣をめぐる米国の日本支持も不十分であり、2014年を守勢に立って始めるよりは、反撃することに決めたのであろう、という日本に対して同情的な論評を、12月26日付でNational Review Onlineに書いています。

 すなわち、日本の安倍晋三総理は、靖国参拝をすることで、日中および日韓間に冷戦が存在することを認めた。参拝は、任期中にもはや両国との良好な関係を求めないと宣言する、両国への、大胆な、危険を顧みない正面攻撃である。彼は、米国の支持も得ていない。安倍は、日本外交の独立性を高めようとしているが、それは、北京およびソウルとの間で続く緊張への正しい行動と信じてのことである。彼は、参拝が緊張を高めることはよく知っている。

 靖国神社は、1867年以来の日本の戦没者が祀られている、アーリントン墓地と似たような、宗教的施設である。靖国には250万柱の英霊が祀られており、1978年には、14のA級戦犯も合祀された。昭和天皇は、1978年以降、靖国参拝とA級戦犯の合祀を拒否していた。

 1985年に中曽根総理が公式参拝をするまでは、靖国に関する国際的議論はほとんどなかった。抗議を受けて、中曽根は以後の靖国参拝を断念せざるを得なかった。2001年から2006年の小泉総理による毎年の参拝は、外交的抗議の炎を再び煽った。中国と韓国は、日本の現職閣僚、とりわけ首相の参拝を、熱心に非難した。A級戦犯による残虐行為の記憶を消し去る企てであるとして怒りを覚えたのは確かだろうが、一方で、中韓の当局者は、靖国参拝を、日本に圧力をかけ、アジアで孤立させるための手段としても使ってきた。

 2006年以来、中韓との関係を安定化させるためもあって、日本の現職首相は靖国参拝をしなかったが、就任1年を迎え、靖国参拝を控えてきた安倍総理が、「公式参拝」をした。中韓からの迅速な反応は予想されたものであった。もっと驚かされ、憂慮させられるのは、米大使館が、「失望した」と言い、「安倍の行動は日本と近隣国の緊張を悪化させるだろう」と言ったことである。それは、ワシントンが、安倍の判断を信頼せず、責任ある同盟者と看做さないかもしれない、という明確なメッセージであった。

 北京もソウルも、米国の宣言を東京への圧力と看做して満足し、日本を孤立させるための容赦ない企てを続けるであろう。尖閣周辺での中国の挑発に対して日本に自制するようワシントンが繰り返していることを懸念する者にとって、米大使館の声明は、米政府の同盟国軽視の新たな例であるように見えるであろう。


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