2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月27日

 真の問題は、中韓がどう反応するかではなく、なぜ今なのか、である。安倍の目から見れば、北東アジアにおける状況は悪化の一途をたどっている。韓国の大統領には1年近く拒絶され、先月、中国は尖閣上空を含む東シナ海上にADIZを設定し、米国はそれに対する確固たる反応を示すのではなく、バイデンは北京でADIZを撤回させることに失敗した。中国の軍事近代化、軍拡計画は、留まるところを知らず、空母やステルス戦闘機といった洗練された攻撃的武器を開発し始めている。

 安倍総理は、2014年を、守勢に立って始めるよりは、反撃することに決めたように見える。それは、唯一の同盟国、米国に反抗することもいとわず、より独立した道を求める、ということも示している。靖国参拝は、安倍政権は過去に何度も繰り返してきた歴史に関する謝罪をもうしない、というメッセージであった。また、日本の国益と引き換えに中韓に関係改善を嘆願することはない、というメッセージでもある。北京、ソウルとの高官対話の推進と組み合わせれば、総理の靖国参拝のインパクトは軽減された可能性はあるが、予見しうる将来にわたって、日本と中韓の関係は、極めて冷え切ったものとなろう、と述べています。

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 安倍総理の靖国参拝を、中国、韓国そして米国の反対も意に介しない決然たる措置として、称賛とまでは言えないが、日本の態度はもはや不動であることに理解を示している論説です。この論説のような主張に応えるためにも、日本側も、決然たる態度を維持し続けることが望ましく、オースリンも、日本はそうするしかないと考えているようです。

 ただ、論説で、一つ間違っているのは、天皇のご参拝が途切れたのは、1978年のA級戦犯合祀以降と言っていますが、実際は、1975年の三木総理の「私的参拝」発言以降である、という点です。もっとも、天皇参拝中止の理由については、宮内庁はその経緯を明らかにしていないので、すべては推測の域を出ません。しかし、1975年の国会で、天皇のご参拝は私的か公的かという、かなり執拗な質問があった後では、皇室の問題については、すべてに、慎重の上にも慎重を期する宮内庁が、大事を取って御親拝を中止したことは十分理解できます。

 他方戦犯合祀については、公式記録に残っている陛下のご発言は戦犯に同情的です。富田メモの真偽については、今なお議論の対象となっていますし、そもそも御親拝中止はA級戦犯合祀の三年前のことですから、無関係と断じて良いと思います。

 本論説もそうですが、28日付ワシントン・ポスト社説なども、アーリントンを引き合いに出しています。それは、A級戦犯が祀られている靖国は事情が異なる、という留保付きでの言及ではありますが、靖国を戦没者追悼施設として正しく見ていると言えます。靖国の本質について、日本が真正面から広報活動をすることができる余地はあるように思います。

[特集]靖国参拝をどう考えるか?

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