2024年4月27日(土)

喧嘩の作法

2014年2月19日

 つまり特許ライセンスだけでは実際的ではなくノウハウ、トレーニング、部品提供、メンテナンスなどいくつもの要素で技術移転を考えなければいけない。さらにもしベトナム人が技術を欲しいと思っても世界のどこの誰が持っているのか、また会いにいっても使わせてくれるかどうか分からない。

 この頃映画『不都合な真実』が既に公開されていた。世界でいい環境技術をもつ企業が、特許で独占してしまい、世界のためにではなく自社だけのために使うという「知財制度の不都合」も言われ始めていた。

 こうした背景からWIPOグリーンの仕組みを考え、最初は日本の官庁に対し国として採用してもらえないか何度か問いかけた。しかし当時会った人たちは政権与党からの制約があったせいか検討するという回答だけでそれ以上進まない。時間がかかりすぎるため次にWIPOに提案した。WIPOは国際官庁ではあるが企業実務経験者が多い。彼らは自分の経験上これはワークするとして敏感に反応しすぐに採用を決定した。

 最近、中国の官庁主導によりSSゲート(南々技術移転)という組織が上海で活動し始めている。中国は途上国への環境技術ライセンスをビジネスの大きなチャンスととらえている。中国の官庁も環境技術ライセンスに敏感に反応し動きが早いといえる。しかしここでお株を奪われてはいけない。環境技術こそ日本企業が世界に誇る先進技術であり、ここで世界へのライセンスにより利益を得るのは日本であるべきである。

 とはいえ40年前にホンダが低公害エンジン技術を開発して「未来の子供たちに、きれいな青空を」というメッセージにより世界にライセンスをすると発信したように、環境技術は1社や1国だけのためのものとケチに考えてはいけない。中国も含め世界中で環境技術ライセンスが活発になるのは未来の子供たちのために歓迎すべきである。ビジネスのバトルで日本が勝つことを考えるのはそれから先でいい。

◆WEDGE2014年2月号より










 

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