パレスチナ・ガザ地区で活動する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は12日、アメリカがイスラエルに求めたガザへの支援物資の搬入の増加を、期限までにイスラエルが実行しなかったと説明した。アメリカは要求が満たされなければ、イスラエルへの軍事支援を減らすとしていた。
アメリカはアントニー・ブリンケン国務長官の10月13日付の書簡で、イスラエルに対して11月12日までに、毎日最低350台のトラックがガザに入るのを許可するよう求めていた。
これに関し、ガザ中部に拠点を置くUNRWAのルイーズ・ウォータリッジ上級緊急調整官は12日、イスラエルが期限までに十分なことをしたのかと問われると、単刀直入に「ノー」と答えた。
そして、「ここでは支援が足りない。物資が足りない」、「地域によっては、大勢が飢えている。みんなとてもお腹を空かせている。小麦粉の袋をめぐって争いが起きている。ともかく物資が足りない」とBBCに話した。
国連によると、ガザに運び込まれる支援物資の量は現在、ここ1年で最低レベルに減っている。国連が支援した調査の報告書はこのほど、ガザ北部に過去1カ月、物資がほとんど搬入されておらず、飢餓の恐れが迫っていると警告している。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、過去1カ月間にガザに入ったトラックの台数を、1日平均40台強としている。
イスラエルは大幅増と主張
これに対しイスラエルは、ガザに運び込まれる支援物資の量を大幅に増やしたと主張している。
また、OCHAによるトラック台数のデータは不正確だとして、物資が搬入されても十分に配布されていないと国連機関を非難している。
イスラエルはさらに、同国とガザの境界のガザ側には、支援物資の荷物が何百ケースも滞留し、支援機関による引き取りを待っている状態だと主張。支援物資を運ぶトラックの一部は、武装した人々に略奪されているとしている。
しかし、国連はこれを否定。ガザにおける支援物資の安全で円滑な運搬は、ガザを占領しているイスラエルが責任をもつべきだとしている。また、イスラエルの軍事行動によって状況が危険すぎるなら、支援物資の配布はできないとしている。
イスラエルは1年以上にわたり、アメリカが設定する「一線」のほとんどを越えてきた。
ただし、この1カ月間、ガザに入るための検問所をもっと開くべきだとするアメリカの要望には応えてきた。ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は12日朝、新たにキスフィム検問所を開放したと発表した。
COGAT報道官は、「(ブリンケン氏の要求の)ほとんどの点は満たされており、満たされていないものは協議中だ。アメリカの要求のいくつかは、すでに解決されている問題に関わるものだ」とBBCに話した。
アメリカは、イスラム組織ハマスと戦うイスラエルを支援するため、武器を供与している。ガザでの死や破壊の多くは、そうしたアメリカ製の武器によって引き起こされてきた。
BBCのガザ特派員を2009~2013年に務めたジョン・ドニソン記者は、ジョー・バイデン米大統領の任期が残り少なくなり、パレスチナ人4万3000人以上の命が失われた現在の状況で、米政府がイスラエルへの武器の供給を打ち切ることはないだろうとみている。
(英語記事 Israel has missed US deadline to boost Gaza aid, UN agency says)