スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長
小児科医のナデズダ・ブヤノワ氏(68)は12日、手錠をかけられてロシアの法廷に出廷し、ガラスと金属でできた檻に入れられ、判決を待っていた。
ブヤノワ医師は自分が置かれている状況について、「馬鹿げている、まったく馬鹿げている」と私に語った。
「自分に何が起こっているのか、私になかなか納得できない。後になってから分かるのかもし得ない」
ブヤノワ医師は、自分が治療していた7歳の少年の母親から警察に通報された。
少年の父親はロシア軍の兵士で、ウクライナで戦死した。母親は、ブヤノワ氏がこの父親について否定的な発言をし、ロシア兵は当然ウクライナで標的にされると発言したと主張した。
ブヤノワ医師は、自分はそのようなことは言っていないと反論した。母親の言い分を証明する、音声や動画といった記録も存在しない。
しかし今年2月にブヤノワ医師は逮捕され、ロシア軍に関する虚偽の情報を流布した罪で逮捕・起訴された。その後、短期間の自宅軟禁を経て、公判開始前に勾留された。
そして今、ブヤノワ医師は法廷に立ち、自分の運命を知ることになった。
裁判官の入廷前に、職員がカメラクルーに退室を命じた。他のジャーナリストたちと共に、私たちは廊下に案内された。
その数分後、法廷のドアが再び開いた。
「5年半だ!」と、傍聴席にいたブヤノワ医師の支援者が叫んだ。「刑務所に5年半も入れられる!」
医師を担当するオスカー・チェルジエフ弁護士は、「あまりにも厳しすぎる判決だ」と私に話した。
「現在のロシアで起こっていることを踏まえても、このような判決が出るとは思ってもみなかった。たった数語が、誰かをこんなに長く収監する根拠になるとは」
裁判所で医師を支援するグループの一人、アリーナ氏は、「大勢が今日の法廷に駆けつけたのをナデズダが目にしたことが、私には大事だ。私たちは奇跡を信じ続けているから、もし奇跡が起こらなくても、彼女も少しは楽になると思う」と語った。
「このことについて話すのはとても難しい。みんなショックを受けている」
ロシア政府はウクライナへの全面侵攻開始以来、戦争への批判を封じたり罰したりするために厳しい法律を制定している。軍に関する虚偽の情報を広めることを禁じるものも、その一つだ。
ブヤノワ医師に対する実刑判決は、対外戦争がロシア国内での弾圧をあおっていることを示している。
(英語記事 Russian doctor jailed for five years over alleged Ukraine war remarks )