2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月20日

 将来の戦闘に備えて前衛部隊として彼らを育成して来たのかも知れないが、昨年10月7日、ハマスが彼ら独自の論理でイスラエルに挑むに至って民兵組織を使う戦略の欠陥が露呈し、一年のうちにイランの戦略を揺るがす事態に立ち至った。

イランのさらなる報復あるか

 イラン自身の戦力は、ミサイル製造のインフラが手痛い損害を被ったとみられる。費消したミサイルの補充にも問題があるであろう。

 イスラエルに対するミサイル・ドローン攻撃がインパクトを持った様子はなく、性能の向上が必要のようにも思われる。再建には時間を要するであろう。

 そうなれば、核による抑止が第三の柱に浮上するのかも知れないが、核爆弾を目指すことがイスラエルの核施設に対する攻撃を招くことは確実と思われる。今回の攻撃で、イスラエル空軍は片道2000キロ近くの長距離を飛行し、更にはイラン空域に侵入して、精密な攻撃を行うという離れ業を遂行する能力を立証した。上述の通り、イランは枢要な防空能力を喪失し、イスラエルに対し危険で脆弱な状態におかれるに至ったが、いずれ核施設を攻撃する場合に備えたイスラエルの作戦だったのであろう。

 イスラエルの攻撃の翌日27日の最高指導者ハメネイ師の発言は報復には言及せず抑制されたものだったが、11月2日には一転「米国とイスラエルは壊滅的な反撃を受けるだろう」と強硬姿勢に転じた。報道によれば、被害が甚大だったことを知ったハメネイ師が、これを無視することは敗北を認めることになると判断して報復を指示したとのことである。

 報復はイラクにある民兵組織を使って行われるようだと報じられている。しかし、民兵組織を使ったものだとしても、報復は自らを更に脆弱な立場に追いやる可能性が高いように思われる。

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