ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、ロシアに捕虜にされているウクライナ兵と引き換えに、ロシア西部クルスク州で捕虜にした北朝鮮兵2人を本国に送還する用意があると発表した。
ゼレンスキー大統領はソーシャルメディアでさらに、「帰国を望まない北朝鮮兵には、その他の選択肢もあり得る」と述べ、「この戦争の真実を韓国語で広めることで、平和実現に近づけたいと願う者に、その機会が与えられる」と付け加えた。
ウクライナ政府は11日、北朝鮮兵2人を9日に拘束したと発表した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年、ロシアがウクライナとの戦争に北朝鮮兵を投入しているかについて、これを否定しなかった。ロシアが「主権にもとづいて決定」することだと述べていた。
ゼレンスキー氏は、「最初に拘束された北朝鮮兵に加え、今後さらに増えるのは間違いない。我が軍がさらに(北朝鮮兵を)拘束するのは、時間の問題だ。ロシア軍が北朝鮮の軍事援助に依存していると、世界が疑う余地はないはずだ」とも書いた。
軍同士の「連携訓練」のはずが
ウクライナ保安庁(SBU)は、兵士2人が首都キーウで治療を受けていると発表した。
SBUによると、2人はコリア語しか話せず、韓国国家情報院(NIS)の支援を受けて尋問が行われている。
ゼレンスキー大統領は11日にソーシャルメディアで、負傷した男性たちの写真を公開。
大統領はさらに、モンゴルに近いロシア・トゥヴァ共和国のトゥランが出生地として記載されている、ロシア軍の赤い身分証明書の写真も掲載した。
SBUによると、捕虜が捕らえられた際、1人はトゥヴァ共和国に登録された別人名義のロシア軍身分証を所持していた。もう1人は書類を持っていなかった。
SBUによると、1人の兵士は取り調べの際、2024年秋にロシアでこの書類を発行されたと証言。この兵士は、北朝鮮部隊の一部が2024年秋に1週間にわたり、軍隊同士の相互連携能力を向上させる訓練を受けたと話したという。
「目的はウクライナとの戦争ではなく訓練だと言われていたと、この捕虜は強調している。これは注目に値することだ」と、SBUの声明は述べた。
ウクライナ大統領府は11日の声明で、ロシア当局は「この兵士たちにロシア・トゥヴァやロシア支配地域の出身だとする書類を与えることで、実は北朝鮮兵だという事実を隠そうとしている」と非難した。
SBUによると、ロシアの身分証を持っていた兵士は、自分は2005年生まれで、2021年から北朝鮮軍のライフル兵として勤務していたと述べたという。
SBUによると、2人目の捕虜は顎を負傷していたため、質問の一部に筆記で回答した。この兵士は1999年生まれで、2016年から北朝鮮で前哨狙撃兵として勤務していたもようという。
捕虜の扱いを定めるジュネーヴ条約は、当人が理解できる言語で尋問は行われなくてはならないと定めている。さらに、捕虜は公衆の好奇心から保護されなくてはならないと規定している。
BBCニュースや他の国際メディアは、捕虜とその拘束に関するウクライナの報告をまだ検証できていない。
ウクライナと韓国は昨年末、北朝鮮が少なくとも1万人の兵士をロシアに派遣したと報告した。
ホワイトハウスは、北朝鮮軍から多数の死傷者が出ているとの見方を示している。
韓国の情報機関は12月、ウクライナの戦争を支援している間に捕らえられたと考えられる最初の北朝鮮兵士が、ウクライナ軍に捕らえられた後に死亡したようだと明らかにした。