2025年1月12日(日)

移民問題に揺れる世界

2025年1月12日

 物価が高く、言語の壁も立ちはだかるフランスでは、「出稼ぎ日本人」の話は、ほとんど耳にしない。ただ、1年間のワーキングホリデー(ワーホリ)を活用する18〜30歳までの若者たちの姿は、時々、目にする。

花の都・パリの「日本人街」。ここを歩けば、パリ在住日本人の動向を少なからず把握できる(YOICHI MIYASHITA)

 外務省によると、フランスの在留邦人数は3万6204人で、パリ在住者は1万592人だという(2023年10月)。華やかな生活に憧れる人たちもいれば、母国の将来に不安を抱いて渡仏する人たちもいる。

 オペラ座とルーブル美術館の間に、老舗ラーメン店からうどん店、カフェからスーパーまでが並ぶ「日本人街」がある。この一帯にある日本食材店で働く女性がいた。

 24年5月から1年間のワーホリを利用し、東京からパリに来た坂井梨子さん(22歳)は、海外で経験を積むために渡仏した。

 「お菓子作りが好きで、食べ歩きをしながら学ぶことと、フランス語の上達が目的です。お金稼ぎのために来ているわけではありません」

 30歳まではワーホリ制度を享受できる。選んだ国に住みながら、欧州連合(EU)諸国を旅する日本人もいるようだ。とはいえ、カフェオレ1杯やサンドイッチ1個に1000円前後かかる物価高のパリで、坂井さんは、「節約してもどんどんお金がなくなるので、自炊しかできない」とため息をついた。

 文化の違いで苛立つこともあるというが、「今は吸収することの方が多い」と明言。「フランスは、キャッシュレスやプラスチック削減が進んでいて、日本の方が遅れている」といった発見を楽しんでいる。

 フランスは好きだが目指す就職先は日本。客室乗務員や外資系企業に勤めてみたいという。万が一、日本で暮らせなくなっても、パリでの経験を生かせるはずだと信じていた。

 デザイン学部で建築を学ぶ大学4年生の髙山兼伸さん(22歳)も、25年10月までのワーホリでパリに滞在中だ。のみの市に興味があり、卒業制作の題材にしたいのだという。

 「おにぎり専門店で週に35時間働いています。稼ぎは最低賃金ですが、日本より時給が600円くらい高い。ただ、物価が高いので、友達と飲みに行っても2杯で抑えたり、食べ物も我慢したりしています。それでも料金は、日本の飲み放題、食べ放題と変わりません」

 長身かつ美貌に恵まれた髙山さんは、ファッションモデルになる夢もある。「挑戦するなら今だと思いました。ワーホリは楽しむ人たちが多いですが、僕は違います。ある程度の土台を作ってから日本に帰りたい」と目的が明確だ。しかも、経済的な理由で海外に出稼ぎに出る日本人とも考え方が異なるようだった。


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