2025年1月11日(土)

Wedge REPORT

2025年1月11日

 最大9連休となった年末年始で全国各地や世界へ足を運んだ人も多かっただろう。楽しい旅行も、目的地が混雑していれば、また思い出も変わってしまう。これは、旅行者だけでなく、サービスを提供する観光事業者にとってもイメージ低下というマイナスとなる。

山梨県河口湖にあるローソン。コンビニ越しに富士山が撮影できるということから多くの観光客が押し寄せている(GWMB/gettyimages)

 近年、日本でも話題となりつつあるオーバーツーリズムはどのようにして起こり、どう対策ができるのか。きょう11日から3連休、1月下旬には春節(旧正月)を迎えるにあたり、日本や世界のオーバーツーリズムの現状や課題を取り上げた記事5本を紹介する。

<目次>

・〈世界トップクラスの観光受け入れ地・京都〉混雑軽減やマナー啓発では足りない、オーバーツーリズム対策の視点とは?(2024年5月21日)

・中国でも深刻なオーバーツーリズム その姿とは(2023年8月25日)

・今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは(2023年11月22日)

・どうする?日本のオーバーツーリズム(2023年12月6日)

・スラムダンクブームに学ぶオーバーツーリズム対応法(2023年12月21日)

〈世界トップクラスの観光受け入れ地・京都〉混雑軽減やマナー啓発では足りない、オーバーツーリズム対策の視点とは?(2024年5月21日)

国内外の観光客に人気の京都はさまざまな視点からのオーバーツーリズム対策が必要となっている(Buddhika Weerasinghe /gettyimages)

 国内観光客とインバウンド観光客の双方に人気の高い京都は世界に名だたる観光都市と言える。欧州で一大観光地とされるスペインのバルセロナは、人口160万人に対して年間3200万人の観光客が訪れると言われており、住民人口に対する観光客倍率は約20倍である。対して、京都府は人口250万人、観光入込客数は6668万人、京都市は人口143万人で観光入込客数が4361万人なので、住民人口に対する観光客倍率はそれぞれ約25倍と約30倍である。

 世界に目を向けると、イタリアのベネチアが人口5万人に対して2000万人の観光客と、交流人口倍率は400倍と突出した数字もあるが、京都は交流人口倍率の観点からも相当の観光客を受け入れているといえよう。

 そんな京都がバルセロナやベネチアと同様に悩ませているのがオーバーツーリズムである。すでに対策も取られているが、その定義や影響を考えると足りない視点もある。改めて検証してみたい。

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〈世界トップクラスの観光受け入れ地・京都〉混雑軽減やマナー啓発では足りない、オーバーツーリズム対策の視点とは?

中国でも深刻なオーバーツーリズム その姿とは(2023年8月25日)

中国では、観光地が人でごった返しているという( Miles Astray/gettyimages )

 訪日外国人旅行客などの増加で、オーバーツーリズム(観光公害)が問題となっている。今後、中国から団体旅行客が押し寄せれば、さらに問題が深刻化すると言われているが、その中国国内でもオーバーツーリズム問題が発生している。

 若者の就職難、不動産不況など経済的に苦境に立たされている人が多いと予想される中国だが、国内の観光地はどこも黒山の人だかりでごった返しているという。なぜ、こうした現象が起き、今、観光地はどうなっているのか。

 筆者は最近、7月に雲南省を訪れた日本人の友人から「どこもものすごい人出ですよ。中国が日本への団体旅行を解禁したのも、きっと国内の飽和状態を緩和したいという狙いがあると思います」という思いがけない話を聞いた。その矢先、本当に中国が日本への団体旅行を解禁したため、筆者も興味を持ち、中国の国内旅行の状況について調べてみた。

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中国でも深刻なオーバーツーリズム その姿とは

今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは(2023年11月22日)

(gyro/gettyimages)

 コロナ禍を経て、内外の観光客が戻ってくるにつれて、観光客の増加が住民生活や地域生活に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」が論点となってきている。この問題は観光振興を国家戦略とする日本にとってすべての地域に当てはまるものであり、観光事業社だけでなく、観光資源を持つすべての自治体、地域の企業にとっても重要なテーマである。今、対策が政府の会議でも話し合われているが、そもそもその対象が何でありどのような問題があるのかをよく理解し分析しておく必要がある。今回はその整理をしてみたい。

 政府は2023年10月18日、観光立国推進閣僚会議(主宰:岸田文雄首相)を開催し、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を決定した。パッケージでは「都市部を中心とした一部地域への偏在傾向も見られ、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じている状況であり、適切な対処が必要」という課題認識を提示しており、その対応策として1.観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応、2.地方部への誘客の推進、3.地域住民と協働した観光振興を挙げている。

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今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは

どうする?日本のオーバーツーリズム(2023年12月6日)

スペイン・バルセロナのランブラス通り。バルセロナはオーバーツーリズムの一つの事例となっている(cenkertekin/gettyimages)

 前回の「今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは」はオーバーツーリズムの一般的な考えと初期的なパターン仮説を紹介した。本稿では象徴的な事例で更にオーバーツーリズムを掘り下げる。

 事例を考察するに際して、まずは観光客増加に直面したときの地元住民の意識と行動を5つの時系列的な段階でたどるという「Doxyモデル(Doxey1975)」を紹介したい。

 第1段階は幸福感(Euporia)で、適度な観光客来訪による地域の経済成長を通じて、市民が雇用創出、交通インフラの改善、生活水準の向上といった恩恵を受ける。観光客との交流は友好的で、肯定的な存在とみなされる。

 第2段階は無関心(Apathy)で、観光客が増加し、より正式な受け入れ体制(観光産業)が整備されたときに現れる。市民は観光を当たり前の経済活動として見るようになり、人間関係やもてなしの気持ちは減少する。

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どうする?日本のオーバーツーリズム

スラムダンクブームに学ぶオーバーツーリズム対応法(2023年12月21日)

スラムダンクの〝聖地〟として、インバウンドを中心にオーバーツーリズムの現場となりつつある鎌倉市内の踏切(gyro/gettyimages)

 これまでの記事「今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは」で一般的なオーバーツーリズムのパターンと対策の基本、「どうする?日本のオーバーツーリズム」で著名な事例をお伝えした。実はオーバーツーリズムは、既に観光地として確立している地域にとってのみでなく、観光客を呼び寄せたいと思っている地域もそう思っていない地域も含め全ての地域が準備するべきテーマなのである。

 従来、観光客が来ていなかった地域が突然オーバーツーリズムに直面することは極めて稀であった。しかし、SNSを中心としたメディアの発達によって観光客を想定してなかった地域にも突然観光客が押し寄せたり、想定以上の観光客が急増したりして、地域住民とトラブルになるケースが出てきた。

 これまではいわゆるゴールデンルート系の観光が多かったが、今後インバウンド観光客は地方により分散する可能性があり、このような事例は今後も出てくるだろう。準備ができていないところに突然変化がおこると人は多くの場合上手く対応できない。故に、観光客が急増した状況のイメージを膨らませ、どのような対応をするかの想定案を考えてみてほしい。

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スラムダンクブームに学ぶオーバーツーリズム対応法

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