海外でも深刻な問題と化しているオーバーツーリズムについて、隣国・中国ではどのようなトラブルが起きていたのだろうか? 前例を知ることで、これから日本で起きるであろう問題を予習できる面もある。2023年8月25日に掲載した『中国でも深刻なオーバーツーリズム その姿とは』を再掲する。
訪日外国人旅行客などの増加で、オーバーツーリズム(観光公害)が問題となっている。今後、中国から団体旅行客が押し寄せれば、さらに問題が深刻化すると言われているが、その中国国内でもオーバーツーリズム問題が発生している。
若者の就職難、不動産不況など経済的に苦境に立たされている人が多いと予想される中国だが、国内の観光地はどこも黒山の人だかりでごった返しているという。なぜ、こうした現象が起き、今、観光地はどうなっているのか。
埋まるネット予約
筆者は最近、7月に雲南省を訪れた日本人の友人から「どこもものすごい人出ですよ。中国が日本への団体旅行を解禁したのも、きっと国内の飽和状態を緩和したいという狙いがあると思います」という思いがけない話を聞いた。その矢先、本当に中国が日本への団体旅行を解禁したため、筆者も興味を持ち、中国の国内旅行の状況について調べてみた。
上海在住で中学生の子どもがいる友人に聞いてみると、今夏、3年半ぶりに家族3人で内モンゴル自治区を旅行したが、かなり以前から計画を立てていたため、フライトとホテルの予約は問題なかったという。
「7月上旬だったので、まだ多少余裕があったのですが、8月になったら、空港もターミナル駅も大混雑になり、身動きできないほどになりました。有名な観光地はもう入場券の予約すらできない状況になっているようです」(上海在住の友人)
中国文化旅行省の発表によると、今年1~6月の国内旅行者数は延べ23億8400万人と、前年同期比で63.9%伸びた。中国旅游研究院の予測では、今年1年間の国内旅行者数は延べ55億人に上り、コロナ禍前の2019年の8~9割にまで回復するだろうと言われている。今、それほど国内旅行をする中国人が多い。
しかし、コロナ禍以降、中国では、博物館や記念館、寺院などの入場券はすべてネットによる事前予約制となった。ネットでチケットが取れないと、現地まで足を運んでも当日券はなく、入場することはできない。そのため、ネット予約は必須なのだが、それすら取れないことが多く、SNSには嘆きのコメントが多数あふれている。