2024年12月22日(日)

世界の記述

2023年1月9日

 年間平均給与461万円から433万円へ——。これは、国税庁の「民間給与実態統計調査」で、2000年から2021年までの20年間に日本が辿った平均年収の動きだ。一見、大きな変化もなく、デフレが続いてきた日本だけあってか、国内だけで生活する分には問題がないかもしれない。しかし、世界規模で眺めてみると、この国は、いつしか「安い国」へと変貌したのだ。

(allensima/gettyimages)

 そんな中、未来の日本に希望を持てず、海外へ出稼ぎに行く日本人が増えている。彼らの多くは、「このままでは生きていけない」という危機感を抱いている。これから日本を出る男女を始め、すでに欧米やアジア諸国で働いている若者たちの今を取材した。

出稼ぎ大国から出稼ぎに行く日本人

 多くの外国人にとっての「出稼ぎ大国」だった日本国内から、労働者が流出する時代が訪れるとは、誰が予想できただろうか。1980年代初頭からバブル経済に突入していた頃、日本はフィリピンや中国からの外国人労働者の受け入れを始めていた。

 当時は、経済大国の日本が労働力確保のため、アジア諸国から人材を集め、彼らがより良い収入を得られる環境を提供した。同時に、日本の高い技術を学ばせ、いずれは帰国させるという一時的な日本滞在許可を推進してきた。

 世界第2位の経済力を堅持していた日本だが、バブル崩壊による景気低迷に加え、就職氷河期や少子高齢化といった構図が経済活動に打撃を与えていく。しかし一方の欧米諸国は、2000年代にインフラの傾向が進み、経済危機に直面しながらも徐々に平均賃金を上げていった。

 日本が同じ20年間で平均年収を減らす中、西欧の国々では100万〜150万円、米国では250万円近くも所得を上げてきた。そして気がつけば、日本は中国や韓国に追い越され、人手不足に陥るばかりか、国外との競争力に雲泥の差が生まれていたのだ。

 日本を訪れる外国人観光客の多くは、「ニッポンは安い」と口にする。米国の空港で働くシカゴ出身のエミリーさん(19歳)は、羽田空港でこう言った。

 「私の時給は、17ドル(約2270円)です。1日10時間を週3日間働いて、月にだいたい2000ドル(約26万7000円)です。日本は全体的に米国より安く、金銭面での苦労を感じませんでした」

 岸田文雄首相は、「成長と分配の好循環」を声高に主張するが、一部の日本人は、国内で働くことに強い期待を抱いていないのが現状だ。海外の市場に目を向け、日本を出た人々の本音とは、どのようなものなのか。


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