2022年11月28日(月)

世界の記述

2022年11月22日

»著者プロフィール
閉じる

宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 外国人観光客が続々と「安い国ニッポン」を訪れ、さまざまな印象を持ちながら旅を満喫している。前編(「訪日外国人が見た「安いニッポン」の魅力はどこか?(前編)」)では、訪日客の大半が日本に対し、「親切」、「礼儀正しい」、「清潔」といったイメージを抱く一方で、「英語が通じなくて不便」という不満から「年々、意地悪になっている」などの感想を語る外国人について報告した。

(mirsad sarajlic/gettyimages)

 後編では、増え続ける訪日外国人客に対し、日本人はどのような思いで彼らを見つめているのか。複雑な気持ちを持って眺める日本人労働者たちの声が、ひしひしと伝わってきた。その原因は一体何なのか。

海外との「ねじれ現象」

 日本の消費者物価指数は、戦後から上昇を続けたが、2000年以降、ほぼ継続的にマイナスに陥った。一方、ユーロ圏では、この20年間で、毎年約2〜4%のインフレが定着。米国でも、リーマン・ショック後の2009年を除き、常にインフレを維持してきた。安価なモノが手に入り、食べることも格安で抑えてきた国は、世界を見渡しても日本だけだったと言っても過言ではないだろう。

 安いことが当然の社会になった日本について、ドイツ在住歴24年の日本人女性、クラウゼ由加里さん(仮名=55歳)は、一時帰国中の日本でこう語った。

 「ユーロ圏に比べれば、日本は安い国に見えますが、それでも最近は物価が上がっているので、日本人は日本人で大変だと思います。こういう状況の日本を見るとショックですが、欧州も長年の経済危機を経験しました。彼らは彼らなりに踏ん張ってきた感じがします」

 国内で生活していると、クラウゼさんが述べるように、日本は日本で大変なことは想像に難くない。激安商品が溢れる街中で、この国の経済は低迷し続け、賃金アップにつながらない悪循環を繰り返してきた。

 欧州から一時帰国中の筆者も、主に果物、野菜、ビール、地下鉄や新幹線を除けば、だいたい欧米諸国のほうが高いことを痛感する。しかし、日本のモノやサービスの質は、欧米のそれよりも高いことがほとんどで、そこに大きな矛盾を覚える。

 例えば、日本では軽自動車の運転手が増える中、ヨーロッパに住む一般人が日本の高級車を普通に運転している状況や、日本の高品質な電化製品を購入しているような現状を眺めると、明らかに「ねじれ現象」が起きていると思えるのだ。

新着記事

»もっと見る