2024年7月16日(火)

世界の記述

2022年11月22日

Z世代に勇気と希望を

 ここ最近、テレビや新聞などでは、「日本人は、もう頑張らなくていい」といった発言を頻繁に耳にする。果たしてそうなのだろうか。

 販売員を務める佐野智子さん(35歳=仮名)は、頑張っても夢が叶わないことに対する諦めを感じていた。

 「一生懸命やっても良くならない。頑張るにしても、さすがに限度があるように思います。全然、給料は上がらないのに、光熱費とか物価とか消費税が上がっています。私は、海外旅行をしたいけれど、今の日本の状況では難しそうです」

 筆者が欧米人を見てきた限りでは、決して彼らが「頑張っていない」のではなく、インフレの壁にぶち当たりながらも、努力して生きている。その結果、この20年間で賃金が大幅に上昇し、ようやく暮らしやすさを手に入れたと考えるほうが正しいのかもしれない。

 ただ、欧州社会を観察していると、労働者は定時に帰宅し、家族との時間を過ごしたり、バカンスをきっちりと取ったりするなど、「スイッチのオンとオフ」がきっちりしている。これはよく言われている生産性の問題というよりも、「家族第一主義」を念頭に、国全体の政治や経済が動いているからだ。

 欧州に住んでいると、日本人ほど仕事熱心な国民はいないように感じる。スペイン人はよく、「生きるために働いている」と言い、日本人のことを「働くために生きている」と揶揄する。

 たとえそう思われても、日本人は仕事好きな国民であることは間違いない。だが、生み出すモノやサービスと労働力のアンバランスが、どこの国よりも大きいことが深刻な問題なのだ。

 頑張っても何も変わらないのならば、マインド自体を変え、現状の日本に適用せざるを得ないのか。サービス業に勤めるZ世代の愛場和人さん(25歳)の言葉は、若者に勇気を与えるが、これが自然な考えだと捉えてはならないはずだ。

 「昔はお金があったという話は聞きますが、自分が仕事を始めた年から比べても、現状の日本が当たり前なので、不便で大変だという実感はありません。マイホームやマイカーを買うことも、頑張ればできるはず。海外旅行をしたければ、切り詰めた金額で回してやるというのが当たり前。切り詰めなくても行けた人たちが親の世代で、僕たちは違う。この状況が普通なので、不満ではないです」

 デフレ、低賃金、頑張っても変わらないような現状を、国民に当然と思わせてしまった日本。本来持ち得る「勤勉な国民」の力を発揮させることができる時代の再来は可能か。Z世代に頑張り続ける勇気と希望を与え、海外との生活水準のギャップを一日も早く埋めることが、今の日本の最優先課題でなくてはならない。

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