2022年12月8日(木)

世界の記述

2022年11月8日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 10月11日から水際対策の緩和により、外国人観光客の数がコロナ禍以前の水準に戻り始めている。この半年間で大幅な円安が進み、日本はいまだかつてない「安い国」になったようだ。海外から訪れる外国人が思う、「今のニッポン」とは如何に……。

「鎖国」が解禁され、多くの訪日外国人が日本の観光名所を訪れている(ロイター/アフロ)

 日本政府観光局(JNTO)によると、2022年9月の訪日外国人客は、3月に受け入れを始めて以来、最多となる20万6500人を記録したという。コロナ禍以降では最多だが、それ以前では毎月200万人を超えており、2019年の同月比では227万人で、90.9%マイナスという計算になる。

 水際対策が諸外国よりも厳重で、なかなか観光客の増加が見込めない日本だが、今後、訪日客数が増加していけば、「Japan is a cheap country(日本は安い国)」のイメージはさらに広がっていくことだろう。

 ヨーロッパから一時帰国中の筆者が、訪日外国人客が見たニッポンの印象と、日本人が見る訪日外国人と日本に対する思いを、それぞれ前編と後編に分けて取材した。長年、欧米で暮らしてきた筆者の個人的な見解も交え、日本の今を考察する。

英語が通じないニッポン

 日本を訪れる外国人の多くは、もともと日本好きなこともあり、旅の評価が全体的に高いのが特徴だ。中でも、「治安が良い」、「料理が美味しい」、「日本人が優しい」ことを挙げているが、もちろん不満な面もある。それは、どのような時に感じるのだろうか。

 フランス出身のユゴさん(29歳)は、8月から日本に滞在しているという。電車賃を除き、一般的な物価はフランスとほぼ変わらないと感じていた。彼にとって、日本は「別世界」で、日々、新しい発見があると言うが、神経を尖らせる出来事もあったようだ。

 「英語を話せる人が少なくて、イライラが募ります。入国の際、私のパスポートの顔写真が暗くて、入国審査官から『あなたは刑務所に行きます』と言われました。うまく英語で表現できなかったからだと思うのですが、この言葉にはびっくりでした」

 フランス人がこの発言をするのは、興味深い。外国人がパリを訪れた際、英語を話してくれないフランス人に苛立ちを覚えることよくあるのは有名な話。客に対する態度も横柄で、気分を害する旅行者も多いといわれる。とはいえ、入国審査官が放ったその言葉は、深刻ではないか。入国後にいきなり「刑務所」は、日本のイメージを悪くしかねない。

 英語力の問題は、日本人にとっての「永遠のテーマ」ではある。しかし、英語は難解な言語だと筆者自身もいまだに感じている。話せるに越したことはないが、話せなくても恥ずべきことではない。もちろん、仕事の場面で必要な場合は、別である。

 しかし、訪日外国人客が言葉の面で苦労しても、それは「旅の醍醐味」と捉えることも可能だ。意思疎通の問題こそが、忘れがたい海外旅行の思い出に変わるものでもある。日本人はむしろ、外国人旅行者に敢えて日本語で話してあげることも重要な気がする。

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