イギリスのキア・スターマー首相が16日、ウクライナの首都キーウを訪れた。英首相官邸は、ウクライナとの「画期的な100年のパートナーシップ」を象徴する協定に署名すると説明した。
この協定は、すでにウクライナに約束している経済的・軍事的支援を正式なものにし、さらなる支援を提供する内容となっている。
スターマー氏のウクライナ訪問は、昨年夏に首相に就任して以来初めて。アメリカでドナルド・トランプ氏が大統領に復帰するのを目前に、ウクライナへの支援を示す狙いがある。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ新政権がウクライナに対し、ロシアとの和平を迫るのではないかと警戒している。それもあり、イギリスなど主要な友好国と、確固たる安全保障について協議することを望んでいる。
前任の首相らと異なり、スターマー氏は就任直後ではなく、6カ月という長い時間が過ぎてからウクライナを訪問した。この間、ロシアの「違法で野蛮な侵略」に対抗するための長期的な支援を約束してきた。
スターマー氏は移動中、「今ここだけの話ではなく、次の世紀に向けた両国への投資でもある」とコメント。「ウクライナを親密なパートナーたちから引き離そうとする(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンの野望は、戦略的大失敗となっている。逆に私たちはさらに緊密になり、この協力関係が友好関係を次のレベルに引き上げる」と付け加えた。
英のウクライナ支援
この日発表されたのは、軍事的・経済的支援の拡大と、海上警備やドローン(無人機)技術、医療に関する軍事協力の強化など。
ゼレンスキー氏は以前、他国による攻撃抑止を目的とした安全保障を確保するため、イギリスに支援を求める意向を示している。
ウクライナが最も望んでいるのは北大西洋条約機構(NATO)への加盟だが、戦闘が停止した場合には、友好国から平和維持部隊を派遣されることも望んでいる。同部隊には、和平合意で緩衝地帯となりうる現在の最前線をパトロールしてもらいたい考えだ。
スターマー氏の訪問を前にゼレンスキー氏は、このことについて協議したいと述べていた。
こうした取り組みは、イギリスがすでにウクライナに提供している128億ポンド(約2兆4400億円)の支援に基づく。イギリスはまた、毎年30億ポンド(約5720億円)の軍事支援を「必要な限り」行うと表明している。
ウクライナはすでに、イギリスが供給した巡航ミサイル「ストームシャドウ」を、国境から遠く離れたロシアの軍事施設への攻撃で使用している。
ウクライナは、昨年後半に始まったこのミサイルの供給を歓迎している。一方、ロシアはこれを強く非難している。
今回のパートナーシップ協定は、条約と政治宣言で構成されている。数週間以内に英議会に提出される見通し。計画自体は、前保守党政権で進められた。
スターマー氏は2023年に、野党だった労働党党首としてウクライナを訪問した。首相就任後は、ゼレンスキー氏を官邸に2度、迎え入れている。