2022年8月8日(月)

うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月27日

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予防への研究が進まない要因は何か

渡部:労働安全衛生法が改正される見込みで、ストレスチェックが企業に義務付けられます。この取り組みを疑問視する見方はありますが、それでも声を大にして反対する人は少ないようです。ただ、やりっ放し感はあります。その後の対応策をもっと現状に合った形で国は示すべきです。この改正案では予防という効果があるとも思えません。

 多様な予防への取り組みがありますが、関沢さんが言うようにハウ・ツゥが分からない状況で企業が行うのは難しいでしょう。それでも試行錯誤しているのが人事担当者たち。予防の研究を進める一方で、企業が一歩でも前に進めるよう国は、メンタルに効果があるような対策を積極的に実施する企業を表彰するなど、予防対策を推進する制度があってもいいと思います。

―― うつ予防についての研究が日本ではどうして進まないのでしょうか。これが薬依存につながる要因と言えるような気がします。

渡部:研究者が論文を書く前には大学の倫理規定の審査を経る必要がありますし、調査のためにはアンケートなどでデータを集めなければ、しっかりとした裏付けがとれません。ところが、これが難しい。協力が得にくいからです。企業の事例を収集しようとしても、この分野の実態を企業は出したがらず非協力的です。こういう状況から実証研究が進まないのでしょう。大学の研究者は、先行研究をしている人が少ないので、論文を書くにも一から始めなければならず、博士論文で挑戦してもデータを集めきれずに断念し、違うテーマにしてしまうという話はよく聞きます。

関沢:うつの予防についての研究は日本だけでなく、海外でも少ないように思います。うつになった人の治療法の効果検証と違って、数年かけた追跡調査をしないと本当に予防できているかを検証できませんし、今苦しんでいるわけではないので、研究の参加者のモティベーションも乏しいと思います。予防と完全に一致するわけではありませんが、未病うつへの取り組みに効果があるかどうかの検証が、うつの予防に効果があるかどうかの検証に近いのかもしれません。

(独) 経済産業研究所上席研究員 関沢氏

現状は未病うつへの対策が何もない

関沢:科学的根拠があるわけではありませんが、未病うつへの対策として、もっと代替医療的なものに目を向けてもいいと私は思っています。例えば、エモーショナル・フリーダム・テクニック(EFT)、セドナメソッド、バイロン・ケイティのワークは、もっと研究者の関心が向いて、効果検証研究が行われた方がいいと思います。また、代替療法として様々な呼吸法があって、その一部はうつの軽減や予防に本当に効果があるかもしれません。うさんくさいものが広まるのは問題ですが、うさんくさいものでも頼りたいぐらい苦しんでいる人々がいることも確かなので、本当にうさんくさいものとそうでないものを効果検証研究を通じて識別していくことが大切だと思います。

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