2022年8月14日(日)

うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月27日

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 もう1つ、未病うつについて指摘しておいた方がいい点として、未病うつになった人に対して積極的に介入することが本当にいいのかどうかよくわからないことがあります。未病うつの人が本格的な大うつ病になりやすいのはデータから明らかですが、その一方で、未病うつの人の多くは時間が経つと自然に健康な状態に戻っています。もっと研究が出てこないと確定的なことは言えませんが、未病うつに大騒ぎしてあれこれと取り組みを模索するよりも、自然な回復を待つ方がいい場合も多いのかもしれません。ちなみに、Whitefordらの2013年の論文によると、大うつ病の人の53%は、治療しなくても1年で治っているそうです。

渡部:今回の論文では、自己責任で取り組むならば、このような方法があることをいくつか紹介しています。これらは現時点でエビデンスはありません。研究はされていますが、効果検証もこれから。参考にしてもらえればというレベルです。

関沢:未病うつ、という言葉が先に走り過ぎると、先ほどのハウ・ツゥが不十分なので、困惑する人が出てくることになります。

渡部:そうですね。ただ大うつ病は、インフルエンザとは違い、生活習慣病みたいに日常生活の中で少しずつ忍び寄ってくる病です。いきなりではないので、そこに未病うつという状態があるのは間違いありません。これへの取り組みが何もない。精神科医も研究する人も日本で詳しい人がいない。ここに問題があることを指摘すべきだと考えています。

――今回の論文では触れられていませんが、いわゆる「新型うつ」という概念で「未病新型うつ」というとらえ方はできるのでしょうか。

渡部:「新型うつ」という概念そのものは議論があり、一概にうつ病と決めつけてしまうことはできません。ただ現実に会社にいるときだけ、うつ状態になる若年社員がいるのも事実。その意味で言えば、大学で教鞭をとっていると「新型うつ」の予備軍たちが多いという気はします。講義中に学生が手を上げるので質問かと思ったら、教室が暑いと言うのです。場をわきまえない自分中心の姿が見えます。講義が終わると、内容ではなく出席日数が大丈夫かどうかを聞きに来る学生も多い。

 そこに親も大学も失敗させないよう大切に扱う、過保護過干渉があると思います。社会生活が営めない子どもたちを家庭でも大学でもつくっている。大学生活で未病にさせ社会に送り出し環境の変化をきっかけにして発症するようなもの。予防策は学生時代に自立させることだと思います。

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか


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