2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月11日

 アジア太平洋の著しい成長は当然視できない。安全保障、安定、繁栄は、米国と地域諸国の絶えざる努力を必要としている、と論じています。

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 米国の国防長官と商務長官が連名でアジアを重視していくと述べたことには意味があります。特にケリー国務長官が今一つ熱心でないので、なおさらです。

 しかし、アジア重視政策でやるべきとされていることに、オバマ政権が真剣に取り組んでいるかには疑問があります。

 災害が起きた時に人道・災害援助をするのは、南米で災害が起きようが、アフリカで災害が起きようが、やらなければならないことです。最近フィリピンで台風救援に取り組んだ事例をもってアジア重視というのはおかしいでしょう。

 武器の共同開発については、欧州との協力がアジアとの協力より進んでいます。日本が武器禁輸を緩和するのは時宜を得ていますが、武器の共同開発でアジア重視があるとは言えません。

 TPPについては、未だに強い交渉権限を行政府に与えるように議会に求めていません。

 アジアへのリバランシング政策の実施に際して最も重要なのは中国をどう取り扱うかです。この論説には対中配慮があるのか、明快な考え方は表明されていません。

 米国防長官と米商務長官が連名で平和と繁栄を論じると、緊密な経済関係が平和維持にも資するという議論になりがちですが、この点での考え方も明快ではありません。実際には、経済的相互依存が戦争の抑止になる度合いは大きくないと考えられます。

 両長官がアジア重視論をしたことは評価しますが、アジア重視論の趣旨が明快に打ち出されている論説かと言えば、そうでもありません。

 米国のアジア政策にはまだ肉付けが要ります。プラス・サムの経済関係、ゼロ・サムになりやすい政治・戦略関係を踏まえて、良く考える必要があります。

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