2024年7月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月16日

 馬は、台湾の景気回復と自らの政治的遺産を中国との歴史的デタントにかけてきたが、今月予定されていた、1949年以来初となる中国の閣僚による台湾訪問は延期となった。チャイナ・ウォッチャーは、中国政府は他の関係改善を検討する前に先ずサービス貿易協定が承認されることを望んでいる、と言っている。2016年の任期終了前に習近平に会うという馬の夢は少し遠のいたかもしれない、と報じています。

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 台湾の学生による立法院占拠以来の流れを、要領よく正確に説明した解説記事です。記事で指摘されている通り、もしサービス貿易協定が、立法院による精査に委ねられ、原案通り成立しないような場合には、中台デタントを歴史的遺産として残そうとした馬英九の事業は中途で挫折することになり、また、来る地方選、総統選挙を控えて、国民党の中でも王金平の勢力、すなわち台湾出身者の勢力が主導権を握り、あるいは民進党勢力の伸長があるかもしれない、という状況になっているようです。

 欧米の評論は、まだまだ奥歯に物が挟まったような言い方をしていますが、馬英九国民党政権が出来て以来6年間、本土と台湾との統合を既成事実とさせようとしてきた中国の政策が、ここに来て、挫折し、中国との統合を求めない台湾の民意が明らかになって来たということでしょう。

 中国側としても、そうなる可能性は十分知っていたと思います。しかし、軍事力が、まだ、台湾に対する実力行使を成功させるほどには達していないことは、自ら認識していたのでしょう。そこで、馬政権が続く間に出来る限り既成事実を重ねようとして来たのでしょう。

 そして何よりも、中国としては、その政策を続けることにより、米国内において、自由民主国としての台湾の安全保障を重視する声を抑え、いずれ米国は台湾から手を引くという機運を醸成する効果を期待していたのだと思います。また、少なくとも米国のホワイトハウス、国務省など行政府の中、そして国際政治評論家の中の相当部分に、この中国の方針を受け入れる雰囲気を醸成するのに成功して来ました。

 ところが、今回の事件が示すように、台湾の民意は、中国本土との統合に反発する姿勢を明らかにしつつあります。ということは、いずれは平和的統合が成るのだから台湾をめぐる危機は考えなくてよい、という思考停止状況から、何時かは脱却する必要があるということです。台湾問題の鍵を握る米国の政策立案者、あるいは評論家たちも、いずれこの現実を直視せざるを得ないと思います。

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