ミス・ユニバースとなったメキシコ代表のファティマ・ボッシュ氏（バンコク、21日）
タイで21日に行われたミス・ユニバース世界大会で、メキシコ代表のファティマ・ボッシュ氏（25）が優勝した。今年の大会は、開催前からスキャンダルが続き、注目が集まっていた。
今月4日に行われた事前説明会では、タイの運営責任者がボッシュ氏を公然と叱りつけたため、各国の代表たちがこれに抗議して集団で退席する事態となった。
また、18日には審査員2人が大会直前に辞任。そのうち1人は、主催者が選考過程を不正に操作したと非難した。
ミス・ユニバースは世界で最も長く続く美人コンテストの一つだが、近年ではその存在意義や視聴者の減少が疑問視されている。
そうした中でのボッシュ氏の優勝は、同大会をめぐる論争をさらに加える形となり、インターネット上では瞬く間に賛否が分かれた。
多くのメキシコ国民が代表の勝利を祝ったほか、事前説明会での退場を称賛していた人々も歓声をあげた。
一方、運営側が先のスキャンダルを帳消しにするために、ボッシュ氏に王冠を与えたのではないかとの疑念も出ている。
準優勝はタイ代表のプラヴィーナー・シン氏、3位はヴェネズエラ代表のステファニー・アバサリ氏だった。これに、マ・アティサ・マナロ氏（フィリピン）とオリヴィア・ヤセ氏（コートジヴォワール）が続いた。
ボッシュ氏は4日の事前説明会の最中、主催者側のナワット・イサラグリシル氏（60）に、プロモーション用コンテンツを投稿しなかったと叱りつけられた。
ボッシュ氏がこれに抗議しようと立ち上がると、ナワット氏は警備員を呼んだ。こうした状況に、各国の代表らも立ち上がり、次々に退室しようとした。するとナワット氏は「座れ」と声を荒らげ、席に戻らなければ失格にすると代表者たちを脅した。
ナワット氏はその後の記者会見で、自分の発言の一部が誤解されたと主張したが、ミス・ユニバース機構（MUO）はナワット氏の行為を「悪意のあるもの」と非難。大会運営を引き継ぐため、国際的な幹部からなる代表団を現地に派遣した。
ナワット氏は、その後謝罪した。
21日の大会決勝では、ナワット氏が観客席から撮影した写真をインスタグラムに投稿したが、ステージ上では姿が見られなかった。
ボッシュ氏の優勝が決まると、ナワット氏は自身のSNSにタイ語で、「言えない言葉が10億ある」との一文を投稿。さらに記者団に対し、「結果については視聴者の判断に委ねる（中略）世界中の人々がそれぞれ評価できる」と語った。
一方、大会直前に審査員を辞任した一人であるオマル・ハルフーシュ氏は、ボッシュ氏の優勝が発表された数分後に、不正操作の疑惑を繰り返す声明をインターネットに投稿した。
レバノン系フランス人の音楽家のハルフーシュ氏は18日、8人で構成される審査団からの辞任をインスタグラムで発表。「即席の審査団が、136の参加国から30人のファイナリストを選ぶために結成された。そこには、私を含む本来の審査員の誰も出席していない」と主張した。
この非公式の審査団について同氏は、「一部のミス・ユニバース出場者との個人的な関係により、重大な利益相反の可能性を抱える人物たち」で構成されていると説明した。また、この情報をソーシャルメディアを通じて知ったとしている。
MUOは18日、ハルフーシュ氏の主張を退ける声明を発表。「代表を評価したり、ファイナリストを選出したりする権限を与えられた外部グループはない」と述べた。また、ハルフーシュ氏が言及したのは、MUOがミス・ユニバース大会から独立して運営している、別のプログラムの可能性があると示唆した。
この日には、フランスのサッカー指導者クロード・マケレレ氏も、「予期せぬ個人的な理由」によって辞任したと発表した。
BBCは、MUOにコメントを求めている。
ソーシャルメディアに対抗、服装に変化も
1952年に始まったミス・ユニバース大会は今年で74回目。年に一度のテレビ番組から、TikTokに対応するメディアブランドへ進化し、存在意義を保とうとする組織の決意が表れている。
ファンがソーシャルメディアに移行する中、ミス・ユニバースの放送視聴者数は長年、減り続けている。
一方で、中南米や東南アジアでは依然として非常に人気があり、その王冠は、貧困から抜け出す手段や、セレブを夢見る少女たちにとっての近道となっている。
しかし、大会の存在意義への疑問や、女性を性的対象としてモノ扱いしているとの批判は続いている。
大会を運営するMUOは近年、こうした変化に対応を試みてきた。2025年大会の水着審査では、出場者の大半がビキニを着用したが、保守的な国の出場者には全身を覆う衣装が認められた。
（英語記事 Mexico's Fatima Bosch, who walked out on organisers, crowned Miss Universe）
