2025年12月12日(金)

BBC News

2025年12月12日

ウクライナのゼレンスキー大統領

ラウラ・ゴッツィ

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日、東部ドネツク州から撤退し、現在管理している地域に「特別経済区域」を創設する案を、アメリカから提示されていると明らかにした。

ゼレンスキー氏はこの日、記者団の取材に応じた。その場で、ウクライナの和平案をめぐっては、領土とザポリッジャ原発の管理が、未解決の主要2問題として残っていると述べた。

また、アメリカが紛争の早期終結を強く望んでいることや、進行中の交渉の複雑さ、ロシアには戦争をやめる気がないとの自らの見解についても語った。

ゼレンスキー氏はさらに、ウクライナが20項目からなる最新の和平案と、安全保障とウクライナ再建の条件についての別の文書を、アメリカに送ったと説明した。

ウクライナでの戦争をめぐってはここ数週間、首脳レベルでの外交活動が繰り広げられている。アメリカ、ウクライナ、ロシア、ヨーロッパの指導者らが、いくつかの和平案を作成し、調整や修正を重ねている。

ゼレンスキー氏は、「最後の1マイルが最も難しい。さまざまな理由で、すべてが崩れてしまう恐れがある」と述べた。

ロシアは、ウクライナが維持している東部ドネツク州の約3割の領土について、統治権を放棄するようウクライナに要求している。ウクライナは、道理として、またロシアに将来の侵略の足がかりを与えかねないとの懸念から、これを拒んでいる。

ドネツク州の一部を特別区域に

ゼレンスキー氏によると、アメリカは現在、ウクライナ軍がドネツク州の一部から撤退し、ロシア軍がそこに進軍しないことを約束する内容の解決策を構想している。この地域は「特別経済区域」か「非武装地帯」になるとしているという。

この構想についてゼレンスキー氏は、ウクライナが一方的に撤退するのは公平ではないと主張。ロシアも同じ距離だけ撤退すべきだとした。

また、「何が(ロシアの)前進や、民間人を装った潜入を阻むことになるというのか」と疑問を投げかけた。

ゼレンスキー氏は、こうした点は「非常に深刻な懸念」であり、アメリカの提案をウクライナは全く受け入れないかもしれないと述べた。ただ、国民に選択権を与えるため、選挙や国民投票を実施する可能性はあるとした。

同時に、戦闘は今後も続き、交渉の行方を左右するだろうと発言。「多くのことが私たちの軍隊にかかっている。何を保持し、どこで敵を食い止め、何を破壊できるのか。これが全体状況に影響する」と述べた。

ゼレンスキー氏は、ザポリッジャ原発の管理も大きな相違点だと説明した。欧州最大の同原発は最前線に位置しており、2022年3月からロシアが管理している。

ゼレンスキー氏は、同原発をめぐる解決策として、ロシアが撤退し、ウクライナがアメリカと共同で管理することが考えられると述べた。一方で、そうした調整の細部はまだ不明だとし、ロシアが同意するかは疑わしいと認めた。

この紛争の複雑さに対し、ドナルド・トランプ米大統領はいら立ちを募らせているとみられる。ウクライナおよび同国を支援する国々は、アメリカが最終的に、ロシア主導の解決策をウクライナに押し付けようとするのではないかと恐れている。

ゼレンスキー氏は、アメリカが戦争の「早期終結」を望んではいるものの、合意の期限は設定されていないと述べた。

ウクライナはほぼ毎晩のように、広い範囲が空爆の標的となっている。困難で手間のかかる合意よりも前に、即時停戦を望んでいる。

一方のロシアは、停戦が遅れるほど多くの利益を得る立場にある。ロシア軍は前線で少しずつだが前進を続けており、攻撃によってウクライナ住民らを疲弊させている。

ゼレンスキー氏は、アメリカも「ロシアとの何回かの協議を経て」、今ではこの立場についてロシアと一致した考えをもっていると述べた。

用心深さが必要と

ロシアは口が堅めだが、和平案への期待においてアメリカと一致しているとの印象を与えようと努めている。

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は11日、トランプ氏が仲介を試みていることを称賛。クレムリン(ロシア大統領府)で最近あったウラジーミル・プーチン大統領とスティーブ・ウィトコフ米特使の会談で、双方の「誤解」が「解消」されたと述べた。

ラヴロフ氏はまた、ウクライナに外国軍が駐留する形で同国に安全保障が与えられるという案は認められないと主張。「これは、ゼレンスキーの言う『平和の公式』の悲しい論理にまた戻ることになる」と述べた。

そして、ロシアは集団安全保障に関する「追加」提案をアメリカに渡しており、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)の加盟諸国を攻撃しないとの法的保証を与える用意があると付け加えた。

しかし、ロシアがこれまで停戦や休戦の合意を破ってきたことを考えれば、ウクライナもヨーロッパも、ロシアの約束を額面通りに受け取ることはないとみられる。

ヨーロッパとウクライナの当局者らは、ウクライナが再び攻撃されないための安全保障にアメリカが関与することを望んでいる。

ゼレンスキー氏は、安全保障に関してアメリカから草案を受け取ったが、作業は続いていると述べた。これは、アメリカから提示されたものは、ウクライナの不安を和らげるには不十分な内容だったことを示している。

ゼレンスキー氏は、「アメリカはウクライナをNATOに入れたくない。アメリカは公然とそう言っている。(中略)だからNATOについてアメリカがロシアと話し合うのが難しいとは思わない」と述べた。

また、ウクライナは「用心深く」なければならないと発言。「アメリカが他にどんな合意をロシアとしているのかわからない。いずれわかる」と付け加えた。

ゼレンスキー氏はさらに、アメリカのウクライナ支援はいつか終わる可能性があると指摘。それらには、他国を通した武器売却も情報共有も含まれるとした。

そして、協議の危うさと、ロシアの誠実さに対する自身の疑念を表すように、「あさって何が起こるか誰にもわからない。(中略)この交渉がどう終わるのかはわからない」と述べた。

(英語記事 US wants 'special economic zone' in Ukraine's frontline region, Zelensky says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cqjggd000gro


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