北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長
フランク・ガードナー安全保障担当編集委員、ポーリン・コーラ記者
北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は11日、ロシアが今後5年以内にNATO加盟国を攻撃する可能性があると、強い警告を発した。
ドイツでの演説でルッテ事務総長は、「ロシアはすでに、我々の社会に対する秘密工作を激化させている」と発言。「我々は、祖父母や曾祖父母が耐えた規模の戦争に備えなければならない」と述べた。
ルッテ氏のこうした言葉は、西側の情報機関がロシアの意図について発しているものと通じている。ロシアは、こうした主張をヒステリーだとして退けている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先に、ヨーロッパと戦争をする計画はないが、ヨーロッパが望む場合、あるいは戦争を始めた場合には「今すぐ」応じる準備があると述べている。
しかし、自分たちから攻撃は仕掛けないと安心させるような発言は、2022年にもロシアから出されていた。その直後に、約20万人のロシア軍が国境を越え、ウクライナに侵攻した。
プーチン氏は、ウクライナでの和平を実現しようとするアメリカの努力をヨーロッパが妨げていると非難した。これは、戦争終結に向けたアメリカの和平案を、ウクライナを支援する欧州諸国が修正しようとしたことを指している。ドナルド・トランプ米大統領が提示した初期の案は、ロシア寄りとみられていた。
ルッテ氏は11日の演説で、プーチン氏は誠実ではないと主張。ウクライナを支援することは、ヨーロッパの安全保障の保証になると付け加えた。
「プーチンの思い通りになった場合を想像してほしい。ウクライナがロシアの占領下に置かれ、彼の軍隊はNATOとの境界のさらに長い部分で圧力をかけてくる。その結果、我々に対する武力攻撃のリスクが大幅に高まる」
兵器製造能力の差
ロシア経済はすでに3年以上にわたり戦時体制にあり、製造業はドローン、ミサイル、砲弾を増産し続けている。
ドイツのキール世界経済研究所の最近報告によると、ロシアは毎月、戦車約150両、歩兵戦闘車約550両、ドローン「ランセット」120機、そして火砲50門以上を生産している。
一方、イギリスとその西側の同盟国のほとんどは、この水準にはまったく達していない。
専門家らは、西欧のメーカーがロシアの兵器大量生産に近づくには数年かかると指摘している。
フランスとドイツは先に、18歳を対象とした志願制の兵役制度を復活させる動きを見せている。
サイバー攻撃や偽情報の拡散、NATO加盟国の空港や軍事基地付近でのドローン疑惑など、「ハイブリッド戦」や「グレーゾーン戦」と呼ばれるような、しばしば否定可能な事案を含む攻撃は、今年に入って増加している。
しかしこうした事態は、懸念されるとはいえ、ロシアがNATO加盟国に軍事攻撃を仕掛けることで引き起こされる危機に比べれば、取るに足らない。特に、それが領土の占拠や人命の喪失を伴う場合はなおさらだ。
NATOには30の欧州諸国に加え、同盟内で最も強力な軍事力を持つアメリカとカナダが含まれている。
トランプ氏の圧力を受け、加盟国は軍事費の増額を約束している。
「NATO自身の防衛は今のところ持ちこたえられる」とルッテ氏は述べた一方、紛争は「ヨーロッパのすぐ隣」にあり、「あまりにも多くの人々が静かに油断しており、あまりにも多くの人々が緊急性を感じていない。あまりにも多くの人々が、時間は我々の味方だと信じている」と懸念を示した。
そして、「同盟の防衛費と生産は急速に増加しなければならない。我々の軍隊は、安全を守るために必要なものを備えなければならない」と、ルッテ氏は述べた。
(英語記事 Russia could attack Nato within five years, says alliance chief in stark new warning)
