2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月8日

 最近の日朝関係進展の背景に何があるのであろうか? 一つには、安倍氏の拉致被害者ロビーに対する対応がある。これまでと違って拉致ロビーに対する姿勢は慎重になっており、直接の意思決定には含めないことにより、対話を含む政策オプションの選択を可能にしている。更に、日本が北朝鮮に対する制裁を強化した結果、制裁の漸進的緩和を圧力に使える余地が生まれた。安倍氏にとってのリスクは限られている。対話の成功により拉致問題が解決できれば、安倍氏に対する支持は増大する。他方、北朝鮮の4回目の核実験により対話が崩壊する場合には、強硬姿勢を復活すれば支持が上がる。

 最後に、協議を通じて、北朝鮮の最大の関心事は、朝総連本部の命運であった。本件については、日本側が、現在、司法手続きが進行中であると主張したため、今回の合意には含まれていないが、北朝鮮が日本の経済制裁緩和や人道支援に期待できるようになったことは、北朝鮮が軍事的挑発を控える上で十分な価値があると見られる。以上の理由から、最も重要な問題は、北朝鮮が出す調査結果を日本が受け入れ、北朝鮮を安定的な地域の安全保障体制の中に受け入れることが出来るか否かに掛かっている、と述べています。

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 5月の日朝合意について、日本のプラグマティックな外交を高く評価し、十分な成果を挙げている、として極めて前向きに評価している論説です。交渉の経緯や背景についても正確に解説していると思います。

 今回の日朝合意については、比較的好意的な論調が多いようです。米外交評議会の日本専門家シーラ・スミスも、日本が国連の制裁を離れて独自外交に踏み出すようなことは無いとして、日本を擁護する論評をいち早く発表しており、6月2日付中央日報のコラムも、日朝間の懸案解決だけで終わることに懸念を表明しつつも、「日本は韓半島に利害関係を持つ国では初めて北朝鮮を外に誘引する功績を立てた。北朝鮮が日本との深層対話で国際社会との会話のドアを開けたこと自体が意味のある進展だ」と述べています。

 今回の合意がマスロウの期待するような結果に繋がるか否かは、今後の北朝鮮の出方に掛かっている面が大きいので、もちろん楽観は許されませんが、良いスタートが切れたことは確かでしょう。

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