2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月21日

 FTに張成沢処刑を受け、ビクター・チャが、12月15日付でフィナンシャル・タイムズ紙に「北朝鮮は過去のどんな時より今危険かもしれない」と題する論説を寄稿し、北朝鮮からの挑発行為に備える必要がある、と論じています。

 すなわち、北朝鮮は、指導部について否定的なことを言っただけで収容所に一生入れられるようなところだが、張成沢の処刑は尋常ではなかった。これまで、専門家は、彼が北朝鮮のNo.2で、金正恩の後見人であり続けると考えていた。

 張の処刑、2012年7月の李英浩の粛清は金正恩自身がやっているように見えるが、彼の権力基盤ははっきりしない。金日成は軍より党を、金正日は党より軍を重視した。しかし金正恩はこの2つの組織や張や李の手下を疎外している。大胆であるが、危険である。

 張の処刑は1950年代に金日成が無慈悲にライバルを殺した時以来のことである。金正恩は強硬であり、張が代表していた改革開放に行くことはない。

 張の粛清は北で政権を揺るがす権力闘争が行われていることを示す。張が外部からの影響も使い、党、軍、青年団の一部と抵抗しようとしたとの声明は信じがたい。

 次に何が起こるか、はっきりしない。張の妻、正恩の叔母、金敬姫がどうなっているか、重要な指標になる。(注:彼女は長老の葬儀名簿に名が出ており、政治的には健在である)

 金正恩は独り立ちしつつある。しかし北が今後安定すると見る専門家はほとんどない。中国の沈黙は目立っている。張は中国とのパイプ役であった。張と取引が出来るので、第3回核実験後、中国は金正恩と距離を置きえた。米国は中国が北と宥和しないように説得し、対北制裁強化を共に強化すべきである。

 北朝鮮について確実なことは、予測不可能性であるということである。張処刑の日に、北は韓国に凍結されていた工業プロジェクトの再開を提案し、その前に拘束していた米国人旅行者を釈放した。


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