2026年10月8日(木)

トランプ2.0

2026年10月8日

「隠せる」と「隠せない」の差

 タラリコとエルサイードには共通の選挙戦略がある。タラリコは、全米民主社会主義者(DSA: Democratic Socialists of America)のメンバーではなく、本人は「私は社会主義者ではない」と断言し、自身を資本主義者と呼んでいる。タラリコにとって重要なのは、キリスト教的な道徳的価値観によって、自身と権力乱用などの容疑による弾劾から免れたパクストンを有権者に比較させることである。

エルサイードも同様、DSAに所属しておらず、自身を資本主義者と名乗っている。この選挙戦略の背景には、トランプが民主社会主義を共産主義にすり替えて、「民主党=共産主義(者)」のレッテルを貼り、それを選挙戦略の中心に据えたことがある。

 また、米CBSニュースと大手調査会社ユーガブが行った投票に出向く可能性が非常に大きいと推測される有権者を対象にした全国世論調査(2026年9月8~11日実施)では、中間選挙において民主社会主義者によって支持された候補に対し、26%が「投票する可能性が大きい」と回答し、42%が「投票しない可能性が大きい」、32%が「影響なし」と答えた(図表3)。このような米国民の民主社会主義に対する否定的な感情も、影響を与えているとみてよい。タラリコとエルサイードは、民主社会主義を前面に出して戦うのは、選挙結果に不利に働くと判断したのだろう。

 ただし、これはあくまでも全米の調査であり、民主党支持者に限ってみれば、51%が民主社会主義者によって支持された候補に「投票する可能性が大きい」と答えている。

 タラリコとエルサイードの地盤では、彼らは民主社会主義を「隠す」選挙戦略を選択し、それが選挙戦終盤に入り、良い結果を生んでいるのだろう。

 タラリコとエルサイードが直面している共通の課題についても述べておこう。「エルサイード氏は米史上初のイスラム系連邦上院議員になれるのか?」(2026年9月25日付 電子版)で指摘したが、彼はアフリカ系の票獲得に苦戦している。同様に、タラリコもアフリカ系の票獲得が課題になっている。彼は、民主党予備選挙においてテキサス州選出のアフリカ系女性で現職の連邦下院議員ジャスミン・クロケット氏を破ったが、その後も、両者の間にしこりが残った。タラリコとエルサイードの課題は、アフリカ系の票の獲得にある。

 一方、彼らと戦っているパクストンとロジャーズの2人にも共通点が存在する。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(2026年9月30日付 電子版)によれば、パクストンは9月9~10日にテキサス州ダラスで開催された共和党の全国大会が、支持率に悪影響を与えたという認識を示した。ワシントンで同月24日に開かれた非公開の献金者との集まりで、パクストンが「率直に言うと、党大会を開催して支持率が下がった。みんなの支持率が下がった。今はあまり良くない状態だ」と、語ったと言う。

 他方、ロジャーズは9月21日(現地時間)、自身のSNSに投稿した動画の中で、食料品高騰に懸念を示した上で、「イランとの戦争は即座に終わらせるべきだ」と主張した。

 パクストンとロジャーズは、トランプを「隠す」ことができず、トランプが自分たちの足を引っ張っていると感じているようだ。それが上記の発言に表れている。

 今回の中間選挙で全米の注目を集めるテキサス州とミシガン州――民主社会主義を「隠せる」とトランプを「隠せない」が、終盤戦に入り支持率に影響を与えている。

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