中国医薬学会の安全な医薬処方宣伝専門家で協和病院の主任薬剤師である張継春氏によると、統計では米国で毎年150万人が薬の服用ミスで健康被害を被っておりそのために10万人もの死者も出ているという。中国でも安全でない薬の服用が深刻な薬害事件を引き起こしており、中国赤十字社による統計では「非正常」な死亡者(寿命による自然死ではないという意味だろう:筆者)数は年間800万人に上り、そのうち医療事故によって40万人もの不慮の事故での死者が出ているという。そのうち多くを占めるのが安全でない薬の服用によるものである。
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しかし、その一方で昨年の安全月間にネットを通じて行われた「医薬品安全に関する知識クイズ」に参加した170万人のうち10題全てに正解した人はわずか11%に過ぎず、9割の人が薬の服用や保存、禁止事項などについての常識が欠けており、新生児の抗生物質へのアレルギーによる聾唖を引き起こしうること、妊婦の抗生物質濫用が奇形児の原因になりうること、飲酒後の薬服用が死亡につながりうること、過度な薬による減量が深刻な意識障害を引き起こしうること、薬に服用時間を守らないことが消化器の疾病をもたらしうることなどの回答ミスが比較的多かった。
中国科学協会が中国27の省(自治区、直轄市)で行った都市住民の医薬品服用に関する調査では87%の回答者が自分で薬を買って服用した経験があり、説明書が良くわからなかったことがあると答えたひとが67%に上った。36%が自分で薬を買ったときに間違えた経験があると答え、うち26%が薬を間違えてちゃんと直せなかったことがあると答えた。
高齢者、子どもは特に深刻な問題に
今年の「安全月間」で重点を置いているのは老人や児童という特別なグループだという。老人の医薬品の吸収、新陳代謝率は減退することから若者に比べ、2~3倍も反応が悪いとされる。中国の老人は平均で3種以上の疾病を患ったことがあり、中には5、6種患った経験を持つ人もいる。病気一種で相応の薬が処方されることから、患者によっては20種以上も服用する人がいるという。多くの薬を服用すると互いに副作用を及ぼし合うから治療に影響するだけでなく、副作用も小さくない。中国は高齢化社会に直面しており、全国の高齢者人口は2億人を超えており、高齢者が安全に薬を服用する問題も顕著になりつつあるのだ。