2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月18日

 さらに技術革新の推進者は今や国防省だけではなく、1980年代から、研究開発予算、そして技術革新の中心は世界の民間部門に移った。と同時に、米国の技術が普及するにつれ、米国の競争相手は、米国の知的財産権を不当に利用し、技術をより安価に大量に開発した。

 今、国防省と産業界のパートナーは、軍事、技術優位のための新しい戦略を考えなければならない。新しい戦略は、核兵器国から個人のテロリストに至る幅広い脅威が存在する、不確かで多極の戦略環境に対応しなければならない。

 グローバル化の時代ゆえに国際協力が有用で、また広く利用可能な商業技術を活用する必要がある。

 米国防総省は、米国の様々な力を活用し、戦略的な技術の必要性に応じなければならない。例えば、さして高価でない種々のシステムを短時間で活用する、世界の民間部門の技術革新を活用する、優れた教育と米戦闘員の経験を基礎に、有人・無人の組み合わせといったように、創造的にこれらの技術を活用する戦略である。

 世界経済の現状から言って、今後いかなる国も、米国が過去40年間享受したような軍事的優越を持つことはありそうにない。

 しかし、米国防総省は、米国と同盟国の重要な利益を守るのに必要な技術能力を提供することはできる。そして、米国は、引き続き、比類ない知性、組織力、財政力を有している。今後の技術戦略を成功裏に実施するためには、強力な指導力と、諸機関、議会、産業界の協力が前提条件である、と述べています。

* * *

 上記論説の、米国の軍事技術の優位に関する認識は、その通りです。

 ただ、米国の圧倒的な軍事技術の優位を維持するために新しい戦略が必要であると言っていますが、その新しい戦略が何を意味するのかは必ずしも明らかではありません。民間活力の利用、国際協力の推進なども踏まえ、技術を創造的に活用することが肝要であると言っていますが、これまでの相殺戦略のような、明白な大戦略とはいえません。

 米国の技術優位の衰えは、これまでも言われてきました。しかし、米国は、歴史的に危機感を持った時に再生する底力を発揮してきました。今回も、国を挙げて危機感を共有すれば、今の傾向を変えることは十分あり得ましょう。

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