2024年12月22日(日)

安保激変

2014年9月16日

 新たな「テロとの戦い」を開始せざるを得ない状況になったオバマ政権の関心が再び中東に向き始めた。引き金となったのはイラク・シリア間の国境地帯で勢力を拡大している武装勢力のイスラム国による活動が活発化したことである。

空爆拡大容認に向かう世論

 当初はその全容が把握されていなかったイスラム国だが、6月にイラク政府軍や治安部隊を圧倒してイラク国内の複数の主要都市を勢力下に収めたあたりから、その脅威がより現実感を持って議論され始め、8月21日にはチャック・ヘーゲル国防長官とマーティン・デンプシー統合参謀本部議長が共同記者会見の席上でイスラム国を「喫緊の脅威(immediate threat)」と呼ぶに至った。

 6月以降、ほぼ毎日、CNNをはじめとする主要メディアがイスラム国の残忍性について伝える報道を連日行い続けていることとの相乗効果で、イスラム国が米国に直接的な安全保障上の脅威を与え得る存在だという認識が広がり始めている。さらに、スティーブン・ソトロフ氏及びジェームズ・フォーリー氏の二人の米国人ジャーナリストの斬首処刑映像がユーチューブで流布したことが、この流れに拍車をかけた。米国内の世論はこれまでイラクに米国が再び軍事介入することには消極的だったが、ここに来て、いまだ地上軍の派遣には慎重だが、空爆の規模を拡大することや軍事物資の提供、人道支援の継続などに対してはこれを容認する空気が強くなってきたのだ。

 例えば、9月9日にワシントン・ポスト紙上で発表された同紙とABCニュースによる共同世論調査の結果では、91%という圧倒的多数がイスラム国を米国に対する直接の脅威と捉えているという結果が出た。さらにこの調査では71%がイラク国内のスンニ派武装勢力に対する空爆を支持、シリア国内の武装勢力への空爆についても65%がこれを支持しているという結果が出ている。

 また、9月10日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙でも、NBCニュースとの共同世論調査で3分の2が武装勢力への空爆を支持しているという結果が出ている。わずか3カ月前の6月にワシントン・ポスト紙とABCニュースが共同世論調査を行ったときにはイラクへの空爆について賛成(45%)と反対(46%)が拮抗していたことを考えると、世論が確実に空爆拡大容認に向かって動いている様子が窺える。


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