2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月15日

 ISIS(イラク・シリア・イスラム国)が、イラクとシリアにまたがる領域に「イスラム国」の樹立を宣言していますが、その発端となった、イラク北部のモスルなどの諸都市制圧の直後に掲載された、イラク情勢についての、6月12日付ワシントン・ポスト紙と同11日付フィナンシャル・タイムズ紙の社説を紹介します。前者は、宗派的なマリキ政権のやり方の弊害とISISの危険性を比較衡量すれば、マリキを支援するべきである、と述べ、後者は、イラクが宗派的・民族的分裂を克服して統一的な政府を作ることが必要である、と述べています。

 まず、ワシントン・ポスト紙の社説の要旨は次の通り。

 すなわち、米軍による空爆も含め、マリキ政権を支援するという、オバマの6月12日の発表は、総合的に考慮した結果の判断であろう。マリキは、米政府が繰り返し求めてきたような挙国一致のリーダーではなく、シーア派の同胞とイランのパトロンのための、宗派的独裁者として行動することが、あまりにも多かった。

 ISISによる、バグダッドの北のスンニ派の諸都市の迅速な占領は、反乱軍の戦闘能力よりも、むしろ、イラク軍のマリキへの軽蔑を物語っている。彼らのほとんどは、米国から供給された武器をマリキのために使うよりも、逃亡することを選んだ。オバマが、ISISの攻撃を「イラク政府への警告」と呼んだのは正しい。マリキにとって、軌道修正し、スンニ派とシーア派の協力を追求する最後のチャンスである。

 マリキ政権の欠陥は明らかだが、バグダッドが現在直面している敵の危険性と比較衡量しなければならない。ISISの統治領域が、ISISが現在シリアとイラクにおいて支配している地域に根付くことがあれば、それは、米国を含む世界中のテロ攻撃の作戦基地となろう。また、ISISを受け入れない誰もが「背教者」と定義され、処刑に直面する過酷な独裁となろう。マリキがイランに全面的に依存するままにしておくことも、米国、あるいは地域にとって利益とならない。イラン軍は既に隠密裏に展開されており、マリキがISISに対抗するのを助ける用意が出来ており、テヘランにより大きな力を与えることになるであろう。


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