イラクを、スンニ派、シーア派、クルド人の線に沿って再構築することで、安定化させる機会がある、と見る者もいるかもしれないが、きちんとした境界線は存在しない。イラクの分裂は、果てしない暴力を、イラク国民と、世界の他の多くの人々にもたらすであろう。そうした結果を避けるためにあらゆる可能性を尽くさなければ、責任放棄であり、米国は、今後、長年にわたり、大いに後悔することになろう、と述べています。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙の社説の要旨は次の通り。
すなわち、昨年の、マリキのシーア派政府による、スンニ派指導者の追放が、ジハード勢力の帰還に扉を開いた。マリキは、5月の総選挙で勝利し、シーア派の宗派色の強いマリキは、3年前の米軍撤退後に合意されたスンニ派およびクルド人との権力分担協定を、ほぼ破棄してしまった。その結果、彼の統治は、イラクにとって紛れもない災厄となった。
イラクのスンニ派は、以前はISISを拒否していたが、今は、マリキが基本的なサービスを提供せず、彼らを権力から締め出すことを決定したことに怒っており、マリキ政権に背を向けている。イラクが宗派的分裂の瀬戸際にあるのは、イラクが、国家として共有の「物語」を失ってしまったからである。
ISISに圧力をかけるには、マリキは、クルド人勢力とスンニ派を支持する必要があるが、そういう徴候はほとんどない。クルド自治政府の首相は、モスル陥落を防ぐためのバグダッドとの協力の計画は撥ね付けられた、と言っている。
ISISは、現在のところ、イラクに統治地域を確立することに集中しているが、最終的に、それをベースに、グローバルなジハードを追求するリスクは、無視し得ない。