2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月15日

 イラクにおける西側の選択肢は極めて限られている。ワシントンは、物資をタイムリーに供給することで、マリキを助けることが出来るかもしれないが、イラクが絶望的な失敗に陥ることを防ぐことができるのは、イラク自身のみである。シーア派、スンニ派、クルド人を再編した、挙国一致政府が、イラクにとってより役に立つであろう。これが、マリキの酷い誤りの結果復活した、ジハーディズムというゾンビのようなイデオロギーに決然と立ち向かう、唯一の方法である、と述べています。

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 西側の政策担当者たちは、米軍撤退以後、マリキがシーア派の利益のみを保護追求し、国家の統一を顧みなかったことについて、憤懣やる方ないものがありました。それは両方の社説に表われています。

 その中で、ワシントン・ポストは、にもかかわらず、ジハーディストとマリキ政権の間の「より小さい悪」として、米国はマリキ側に立って援助するしかないと言っています。そして、FTは、説教的な公式論ですが、シーア派、スンニ-派、クルドの協力体制を急ぐべきだ、と説いています。

 事態は、ワシントン・ポストの社説が指摘する、悪いシナリオに沿って進みつつあるようです。イラク北部にテロリストの巣窟が出現することは西側世界にとって到底受け入れられませんが、ISISは、6月29日に、カリフを頂点とした「イスラム国家」を樹立した、と宣言しています。オバマは、ウェストポイント(陸軍士官学校)での演説で、テロが米国の直面する最大の脅威だ、と言ったばかりです。また、両社説ともに指摘していますが、米国が援けず、マリキ政権がイランの援助だけによって生き延びることも、今後の中東政策上望ましいことではありません。

 三派の協力は勿論理想ですが、言うべくして出来るかどうか分かりません。この緊急事態にそんなことを言っても始まらないということでしょう。まして、マリキの排除などは、二の次の問題となります。とすれば、限定的な援助と、マリキに宗派的態度を改めさせる圧力を加える、二つの政策を同時に遂行する以外は無いと考えられます。

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