2024年11月24日(日)

安保激変

2014年9月16日

 特に、ウクライナ情勢に関する日本の対応については、米国では「東シナ海では『力による現状変更は反対』とあれだけはっきりと主張し、米国をはじめ世界各国に支援を求めている日本が、なぜ、ロシアがまさに力による現状変更をしているこの状況を前にもっと断固たる姿勢を取らないのか(某元連邦議会スタッフ)」という意見に代表されるような不満が水面下でくすぶっている。

 イラク情勢についても、今年2月にイラク北部の難民に対する緊急支援を決めたあと、6月以降、急激に状況が悪化しているにも拘わらず何ら追加の措置を打ち出せていない。日本政府にとっては、先月からイスラム国に人質に取られている日本人男性が、米国人や英国人のように公開処刑になるような事態だけは回避したいだろう。このことを考えると、今日本政府に打ち出せる措置にはどうしても限界があり、シリアやイラクの難民に対する人道支援を拡大することぐらいしか現実にはできないのかもしれない。それでも、日本が世界有数の主要国だという自負があるのであれば、このような限界の中でも日本政府はイラク情勢にどのように関わるつもりなのか、また、どのような理由で今回は関与をできるだけ最小限にとどめたいのか、などについての議論はもっと活発に行われてもいいのではないだろうか。

 この点を考えると、今年の夏、大挙してワシントンにやってきた日本の国会議員の中でイラク情勢やウクライナ情勢に対して日本がとるべき対応についての知見を披露した人はほぼ皆無、イラク情勢について話題に出た時でも、「米国はどうするつもりなのか」「国際法上、何を根拠にするつもりなのか」など、評論家的な議論しか行われず、議論の大部分が中国に対する懸念の表明や米国の対中政策、米韓関係、日本国内の集団的自衛権に関する議論の説明など、東アジア地域の問題に費やされたことは残念でならない。これでは「世界のほかの地域で何が起こっていても、日本は自国の身の回りのことにしか関心がありません」と宣伝して歩いているようなものだからだ。

 「地球儀俯瞰外交」を掲げる今の日本の政権にこそ、これまでのようにイラクのように日本から遠く離れた地域での活動に関して、アメリカや国際社会から言われてやっと重い腰を上げる、という悪しき前例を打破してもらいたいものである。

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