2024年12月14日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月11日

 前米国務副長官のスタインバーグと米ブルッキングス研究所上席研究員のオハンロンが、7月28日付Project Syndicateのサイトで、‘Reassurance and Resolve in East Asia’と題して、米国の対アジア政策を軍事的な圧倒的優位がなくなることを前提に色々な要素を組み合わせたもの、紛争時にエスカレーションを管理しうるものにすべきである、と論じています。

 すなわち、東・南シナ海で領土摩擦が続く中、米国は、国益と同盟の約束を守るとともに、紛争を避ける戦略を必要とする。米国は紛争の中身について特定の立場を取らないので、この戦略は実施が難しい。同時に、米国は中国の台頭に対応するために軍をより近代化しなければならない。中国がA2AD(接近阻止・領域拒否)能力を強化する中、米国の基地、海軍力の脆弱性をどう克服するかが問題である。 

 我々の著書、“Reassurance and Resolve in East Asia”では、単純ではないアプローチを提唱している。それは、「関与とヘッジ」戦略を応用したもので、中国の台頭が平和的であるように経済的誘因などを活用すると同時に、上手くいかない時のために、しっかりとした軍事力を維持することである。

 ヘッジングは圧倒的な米軍事力の維持と考えられているが、中国の先進兵器の取得は、米国の優位性保持を今後減少させる。米国が一方的に優位を保とうとすれば、中国の侵略された歴史に鑑み、軍備競争になる。

 この問題にエア・シー・バトル概念で答えようとする人がいる。中国はA2AD能力を持ち得る国で、この概念の主張者は中国本土のミサイル発射基地などへの戦術先制攻撃を主張し、かつ、それを米領土からの長距離兵器で行うことを主張している。エア・シー・バトルの論理は誤算の危険を持つ。バトルと言う名称自体良くないし、紛争初期に大規模なエスカレーションを考えていると中国に思わせる。これは冷戦中のエア・ランド・バトルを思い出させるが、ソ連と中国は違う。エア・シー・オペレーションとして海賊対策などを含むより広いものにする方が良い。

 その上、中国本土の戦略兵力への早期エスカレーションに依存する戦争計画は、避けるべきである。全面戦争に至らない解決のための戦略がいる。米国は、事の重要性に応じた措置の選択肢を広く持つべきである。さらに、米国は、長距離打撃能力を大きく拡大すべきではない。それは、先制攻撃の重視、前進配備米軍の日々の活動の軽視につながる。


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