2024年12月5日(木)

BBC News

2024年11月28日

ドナルド・トランプ次期米大統領が省庁やホワイトハウスの要職に選んだ複数人が、爆弾攻撃の予告を受けて脅される事態になっている。警察によると、事件は26日夜と27日に相次いだ。

連邦捜査局(FBI)は、「爆破予告の脅迫」と「スワッティング事件」が多数起きていることを把握していると明らかにした。「スワッティング」とは、偽の通報をすることで、攻撃対象の自宅に警察を向かわせる行為のこと。

トランプ氏が国防総省、住宅都市開発省、農務省、労働省の各省長官や国連大使などに指名した、少なくとも9人が脅迫の対象になった。

政権移行チームのキャロライン・レヴィット広報担当は、トランプ氏に指名された複数の政府幹部候補が「暴力的で非アメリカ的な脅迫の標的になり、本人や家族の安全が脅かされた」と述べ、「捜査機関が迅速に対応し、候補者の安全を確保した」と話した。

レヴィット氏はそのうえで、「トランプ大統領をお手本に、威圧や暴力などの危険な行為に私たちはひるんだりしない」と強調した。

レヴィット氏もFBIも、標的になった人物の名前は明らかにしていない。

トランプ氏が国連大使に指名したエリス・ステファニク下院議員(ニューヨーク州、共和党)は、自分が標的になったと最初に公表した。自宅が爆弾予告の標的になったという。

議員の事務所によると、ステファニク氏は感謝祭を地元で祝うため、夫や3歳の息子と一緒に首都ワシントンからニューヨークへ車で向かっている途中で、脅迫について知らされた。

国防長官候補のピート・ヘグセス氏も、自分が標的になったと認めた。

ヘグセス氏はソーシャルメディア「X」で、27日朝に警察官が自宅を訪れたと書いた。「信頼できるパイプ爆弾の脅迫」の連絡が警察にあったのだという。警察の訪問時、家の中では子供7人が寝ていたという。

「自分は脅迫や威嚇(いかく)には屈しない。絶対に」とヘグセス氏は書き、「トランプ大統領が私に、奉仕するようにと声をかけてくれた。自分はその通りにするつもりだ」と強調した。

報道によると、25日以降に脅迫の対象になった人は全員、シークレットサービスの保護対象になっていない。

トランプ氏が環境保護庁(EPA)長官に指名したリー・ゼルディン元下院議員も、脅迫されたことを明らかにした。「親パレスチナのテーマのメッセージ」と共に「パイプ爆弾を使うという脅し」が、自宅に送られたという。

「私と家族は当時、不在だった。大丈夫だ」とゼルディン氏は述べ、「地元の警察官による迅速な対応に感謝している」と話した。

農務長官に指名されたブルック・ロリンズ氏(右派系シンクタンク「アメリカ第一政策研究所」所長)は、27日朝に家族が脅される事件があり、テキサス州フォートワースの警察が「素早く」対応してくれたと明らかにした。

「私たちは無事で、すぐに帰宅した」と、ロリンズ氏は「X」に書いた。

トランプ氏が住宅都市開発長官に指名した元プロフットボールリーグ(NFL)選手のスコット・ターナー氏と、労働長官に指名したロリ・チャヴェス=デレマー氏もそれぞれ、自分たちが標的になったとソーシャルメディアに書き、共に自分は脅迫に屈しないと約束した。

ホワイトハウスは、ジョー・バイデン大統領が一連の事件について報告を受けたと明らかにし、「ホワイトハウスは連邦捜査機関や次期大統領のチームと連絡を取り合っており、状況を注意深く監視し続けている」と声明で述べた。

ワシントンで連邦議会の警備を担当する議事堂警察は声明で、「スワッティング」事案について連邦捜査機関と連携していると明らかにしたものの、「模倣犯が出るリスクを最小限に抑えるため」、詳細の公表は控えると述べた。

司法長官候補から撤退したマット・ゲイツ前下院議員(フロリダ州)も、脅迫の対象になった。

フロリダ州オカルーサ郡の保安官事務所は、ナイスヴィル町内の住所が爆弾脅迫の標的になったと認めた。

警察によると、ゲイツ氏宅の郵便受けを確認したところ、爆発物はみつからず、周辺の捜索でも何も発見されなかった。

ニューヨーク市警は、BBCがアメリカで提携するCBSニュースに、商務長官に指名されたハワード・ラトニック氏のニューヨークの自宅にも脅迫が届いたと明らかにした。

さらにCBSによると、ゲイツ氏の代わりにトランプ氏が指名したパム・ボンディ前フロリダ州司法長と、ホワイトハウス首席補佐官の就任が決まっているスージー・ワイルズ氏も標的になった。

FOXニュースは、中央情報局(CIA)長官に指名されたジョン・ラトクリフ氏も脅迫されたと報じている。

最近では、同様の偽の脅しが他の政界有力者にも相次いでいる。被害者の中には、トランプ次期大統領を刑事訴追した検察官や、その裁判を担当した裁判官も含まれている。

昨年にはクリスマスに前後して、アメリカ各地で政治家が「スワッティング」の標的になった。被害に遭ったほとんどが共和党の政治家だったが、民主党の政治家も攻撃された。

トランプ氏自身は選挙戦の間、2度にわたる暗殺未遂経験した。捜査関係者は米メディアに、今回の一連の脅しでは、次期大統領は対象になっていなかったと話した。

ただし、連邦捜査当局は25日、トランプ氏とその家族を殺害すると脅す動画を「ほぼ毎日」投稿していたとされるアリゾナ州の男をカリフォルニア州で逮捕し、翌日に訴追している。

(英語記事 Bomb threats made against Trump cabinet nominees )

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp9zdn1nkdjo


新着記事

»もっと見る