2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月22日

 そのような手口は、米国がアジアの信頼できる一員であると見做されている限り通用しないが、紛争水域における事態の進展につき米国の影響力が弱まれば、アジア諸国が直接中国と取引する他ないと考える可能性は高まる。活発に動き始めた日本も、地域全域での中国の主張に直接対抗するまでには至らない。

 米日両国は、アジアの力のバランスがゆっくり変化することを望んでいる。両国は、中国が孤立を深めていることを意識すれば、その態度を和らげるものと期待しているようである。しかし、中国を孤立させようとする両国の試みは、望んでいた結果を挙げなかった。更に圧力を掛ければうまく行くかは疑問である。中国が追い詰められたと感じれば、更に頑なな立場を執る可能性もある。

 協力関係を深めている国々もあるが、中国が地歩を固めていくことに直接挑戦することはほとんどない。中国が今後ともイニシアティブを押し付ける限り、アジアの戦略バランスは、中国が有利になる形に徐々に再編されていく。

 域内の軍事力を有する国々が、中国の灯台建設を力で阻止する等の共同の圧力をかけることが、唯一、中国に行動を改めさせる方法であろう。ただ、そのようなことが出来る可能性はほとんど無いので、アジアの紛争水域での中国のプレゼンスはますます増大することになろう、と論じています。

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 ここでのオースリンは、極めて悲観的な見方を示しています。オバマ政権の無策に対する危機感や批判の意味も込められているものと推測されます。

 確かに、現状において、南シナ海の領土紛争について、米国が中国と直接軍事対決する可能性は高くありません。しかし、中国のベトナム水域での石油試掘に際するベトナムの抗議行動が中国の国際的イメージを損なう上で一定の効果を挙げたことも事実です。日本のベトナム、フィリピンへの巡視船供与は、両国が中国の一方的な行動に対抗する上で一定の効果を持ちます。紛争発生時に米国が周辺水域に艦船を派遣するだけでも、それなりの意味はあります。関係諸国が中国の一方的行動について広く世界に報じ、中国のイメージ低下を図ることは、最低限の対抗措置といえるでしょう。

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