2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年9月22日

 最近、中国は南シナ海の係争中の5つの島嶼に灯台を建設する計画を発表したが、関係諸国がこのような一方的行動を放置すれば、アジアの係争水域における中国のプレゼンスは益々大きくなるとして、米AEI日本研究部長のオースリンが、8月12日付ウォールストリート・ジャーナル紙で警鐘を鳴らしています。

 すなわち、東アジアは平和に見えるが、表面的な安定の下で、地域の状況を大きく変える可能性がある、懸念すべきパワー・ポリティックスの動向が見られる。中国が、紛争地域における自国の主張を押し付ける方針であることを示す一方、米国の地域における影響力は弱まってきている。

 中国は、南シナ海の係争中の5つの島嶼に灯台を建設することを発表した。このようなエスカレーションは、ベトナム、フィリピン、台湾の領有権主張を切り崩すことが目的である。

 東南アジア諸国の懸念が高まる中で、中国の影響力は増大している。8月のASEAN地域フォーラムでは、如何なる国家も海洋において挑発的行動を執るべきでないとする米国の提案は、中国その他の参加国により退けられた。一方、中国の王毅外相は、役に立たないASEANの「行動宣言」のみが海洋紛争の指針であると主張した。

 時を同じくして、中国は海警の艦船を尖閣水域に派遣した。日本政府が最新の防衛白書で同諸島周辺での中国の「危険な行動」を批判した直後のことである。日本が、厳しい批判により中国の威嚇行動を抑止できると期待していたとすれば、それは誤算であったことになる。中国は、日本の決意の程度を試しているものと見られる。

 日本が中国の破壊的行動を公然と批判することを避けてきた時代は去った。安倍総理は、中国の軍事力増強を懸念するアジア諸国の安全保障のパートナーになることを申し出た。日本政府はベトナムに中古の巡視船用船舶6隻を供与する計画を発表し、フィリピンに対しても10隻の巡視船を供与することとしている。7月に日豪両国は先端的潜水艦技術の共同開発に合意している。日印間の協力関係強化は両国首脳の優先課題となっている。

 しかし、以上のような戦略関係の変化は、中国が領土紛争に対する姿勢や軍備増強を見直すことには繋がっていない。むしろ、近隣諸国のこのような反応は、中国の軍近代化計画を正当化する理由に使われている。東アジアでは、全ての関係国が態度を硬化させており、きわめて不安定な状況にある。どの国も一国で中国に対抗することはできない。

 板ばさみになったアジア諸国は、中国のイニシアティブに反応するしかない。更に厄介なことは、中国が米国を外交的に孤立させようとしていることである。王毅外相は、米国を部外者扱いして、「アジア諸国」に対し、外部の干渉無しに共同で問題を解決しようと呼びかけた。


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