再生可能エネルギーの接続保留が発生し、唐突、不透明と批判が相次いでいる。しかし、再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)はもともと持続性がない制度なのだ。再エネ特措法は、2011年8月、菅直人首相(当時)の退陣と引き換えに急ぎ立法されたが、モデルとなったドイツではFITが既に大問題になっていた。12年7月の制度開始時点で、FITに内在する課題を強く警鐘を鳴らしていた本稿を再掲する。(Wedge編集部)
固定価格買取制度(Feed-in Tariff、以下FIT)とは、再生可能エネルギーによる電力供給を、20年間等の長期に「固定」した価格で、電力会社に買い取ることを政府が義務づけるものだ。その費用は賦課金として電気料金に上乗せされ、一般家庭を含めた電力需要家が負担する。
買取価格は、「効率的な供給を行う場合に通常要する費用」に「適正な利潤」を加えて算出される(再生可能エネルギー特別措置法〔以下、FIT法〕3条2項)。買取価格は1年ごと(必要があれば半年ごと)に見直すことができるが(同3条1項)、翌年から価格を引き下げても、その価格が適用されるのは翌年以降に設置される設備で、過去の分は長期間固定される。
FITは、再エネ事業をリスクのない投資に仕立てるため、普及拡大につながる。他方で、努力してコスト削減を行うと翌朝の買取価格切り下げに反映されてしまうため、事業者にコスト削減のインセンティブが働きにくい側面がある。換言すれば、国民負担を最小化することが難しい制度なのである。
FITの先駆者であるドイツは、国民負担が想定以上に膨らみ、その運用に苦心している。太陽光発電の導入実績が目標を大幅に超過するバブルともいうべき導入ラッシュが発生し続けたからだ。導入ラッシュにドイツが投じた費用は驚くべき額で、FITの負担額は、11年だけで総額136億ユーロ(約1兆3600億円 ※原稿執筆時点2012年6月時点の為替1ユーロ=100円で計算、以下同)、1世帯あたりの月額負担額は10.3ユーロ(約1000円)と推計され、これは電気料金の2割近い。この負担額の半分以上が太陽光発電に費やされてきたが、その発電量は総発電量比3%に過ぎない。独シュピーゲル誌も「太陽光発電は、ドイツ環境政策の歴史で最も高価な誤りになりうる」と批判している。
日本はドイツの教訓を真摯に学び、できるだけ少ない国民負担で、より多くの電力供給を得る、より効率的な再エネ供給のあり方について急ぎ検討を始めるべきだ。結論を先に言えば、FIT法の改正が必要である。
独の導入ラッシュ 2つの教訓
ドイツは1991年にFITを導入し、2011年末において電力消費量の20%が再エネでまかなわれている。特に大きく普及したのが、風力発電と太陽光発電である。2011年末における累積導入量は、風力発電が約2900万kW(世界3位、全世界導入量の12%)、太陽光発電が約2500万kW(同1位、36%)である。