2022年7月2日(土)

エネルギー問題を考える

2014年10月21日

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朝野賢司 (あさの・けんじ)

一橋大学イノベーション研究センター特任講師

京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総合研究所を経て、電力中央研究所に入所。17年より社会経済研究所上席研究員と現職を兼任。

 FITの価格更新を1~2カ月程度に短縮することも、導入目標から買取価格を設定することも、FIT法の改正を要する。もちろん現行法の枠内でも、買取価格の客観性と透明性を高める工夫によって、ある程度効率化につなげることはできる。例えば買取価格の設定で、トップランナーの設備を基準とする、あるいはコストデータの中で非効率(高コスト)なプロジェクトを上から2割を除外するといった手法だ。しかし、これでは不合理な導入ラッシュを防ぐのに十分ではない。

再エネの拡大は
経済にプラスか?

 最後に、今後の論点として、FITによる再エネの普及と関連産業の拡大が、本当に日本経済の成長に寄与するのか再検証すべきだ。日本のFITの目的は、同法1条にあるように、健全な国民経済の発展である。確かにFITは現時点の再エネへの投資を喚起するので、関連企業の収益改善と雇用創出をもたらすと期待されている。

 しかし、再エネの普及拡大によってGDPは参照ケースに比べてマイナスになることが、基本問題検討会における全てのモデルによって示されている (図表3)。これは、再エネは従来型電源と比べて現時点で割高であるので、その投資には当面、追加的なコストがかかるからだ。FITは割高な電源を長期に固定して買わせるので、その分、買いたかったモノが買えなくなるからGDPは下がるのである。

 実際にドイツでも「導入されすぎ」「費用負担の拡大」に困り、買取価格の低減を急いでいる。換言すれば、導入を抑えれば、費用負担、ひいては経済への悪影響を止められる。日本でFITによる追加的なコストが長期的に回収されるためには、日本企業が付加価値を生み、それを内部化することで、経済成長を促すことが不可欠である。しかし、結晶シリコン系の製造技術の汎用化によって中国勢が圧倒的な競争力を持つ太陽光パネルに代表されるように、それは相当に険しい道のりだ。いかにして健全な国民経済の発展を達成するのか、という観点から社会的に適正な利潤を示すことは喫緊の政策課題である。

 また、FITの買取価格は、高めれば導入が拡大し、低ければ導入量は小さくなるトレードオフの関係にある。したがって、導入量ばかりを優先するのではなく、できるだけ少ない国民負担で、より多くの電力供給を得るという効率化の観点から、買取価格を設定すべきである。

 現行法では、事業者に適正な利潤を保障する3条2項、そして施行後3年間は特に利潤に配慮する附則7条によって買取価格が設定されているが、ここに効率化の観点はない。日本が手本としたドイツでも、買取価格の調整を通じて、導入量(その裏返しとしての費用負担)をコントロールしている点を忘れるべきではない。

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