2024年5月14日(火)

東大教授 浜野保樹が語るメディアの革命

2009年7月4日

ロジスティックス

 その手順はこうだ。日本にいるメンバーがTV放映をコンピュータで圧縮しながら録画し、そのデータを翻訳専門のメンバーにインターネットを通じて送る。文字放送であれば、翻訳の際に参考になるので文字データを必ず記録しておく。直接日本から中国に送ると速度が遅いため、IPアドレスを打ち込んで韓国経由で中国に送る。映像を見ながら翻訳を行うのだが、字幕組が決めた書式で中国語に翻訳したものをワープロで打ち込む。字幕を画面に入れる専門のメンバーにデータは送られ、ベテランになると2時間くらいで字幕が映像に入る。

 完成して一番早くアップした字幕組のものは、アップしたとたんダウンロード1万にも達するが、後れをとった字幕組のものは10分の1くらいになる。それを競って誰よりも先んじることをメンバーは喜びとしている。

 30分のテレビ番組の場合は、放映からアップまで8時間以内を目処にしている。つまり日本で放映されて、半日もたたない内に中国の字幕がついた日本のアニメーションの映像が違法に中国で見られているのだ。

報酬は賞賛のみ

 字幕組は、思いたった者がリーダーとなりサーバーを自前で確保する。メンバーは個人的な伝手で集められ、ニックネームで呼び合い、面談することはない。一つの字幕組は10人から50人で構成されている。映像を圧縮したり、字幕を入れるなど、作業に必要なソフトウェアは、コピーガードが外されたものがメンバーに送られてくるので費用はかからないが、サーバーの維持経費は、メンバーが小遣いやアルバイト費をつぎ込む。

 利益を目的とせず、彼らの報酬はファンからの賞賛だけであり、好きな作品のために奉仕しているという思いがあるため、違法行為という罪の意識も低い。海賊版以上に対応がやっかいである。

 


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