このような内容を黒板に書いてしまったのはなぜなのか。モスフードサービスは「すべての原因は当社の管理体制の甘さにあった」とコメントしている。同社へメールで確認したところ、事実としては「黒板を書いたのはアルバイトスタッフである」ということ、そして「対象となった中国人スタッフは2年以上前に退職している」ということだった。アルバイトスタッフが内容を考え、既に退職した過去のメンバーをネタにして書いていたのだ。当の本人に、レイシズムや女性蔑視の差別意識があったのかは定かではない。確かなこととしては、本来ならば通過するべきチェック機能が果たされていなかったということだ。
スタッフへ与えている裁量の大きさが裏目に
モスバーガーの店頭設置黒板については、読者の皆様もご覧になったことがあるだろう。スタッフが毎日手書きし掲出しているため、店舗ごとに独自性や地域性がある。これまでネット上では、「モスバーガーの看板がかわいい」「親しみやすい」など、好意的に捉えられることが多かった。
また、企業としてシニア採用を積極的に行い、マニュアルに頼るだけではない温かい接客姿勢を大切にすることでも知られている。以前にコラムニストの志賀内泰弘さんによって紹介された「モスバーガーのおばちゃん」というエピソードが有名だ。
http://www.giveandgive.com/iihanashi_top/genki/vol_0063.html
他のファストフードチェーンと比較して好感度の高かったモスバーガー。それだけに、今回の炎上に触れて「あのモスがこんなことを……」と意外に感じたという意見も多かった。
手作りの店舗運営や温かい接客姿勢にこだわっていけば、脱マニュアル化とスタッフへ与える裁量の拡大が為されていくのは当然のことだろう。それは同時に、運営側のマネジメントの複雑化を意味する。黒板にメッセージを書くという裁量を与えた結果、不用意な文章によって広く社会の批判に晒されてしまう。
昨年話題となった「アルバイトスタッフのバカッター問題」と今回の事案が本質的に異なるのは、問題が個人の悪意によって引き起こされたものであるとは単純に言い切れないことだ。企業として目指す姿があり、そのためにスタッフへ与えた裁量であったのに、結果としてマネジメントの不足を招き裏目に出てしまった。