高齢労働者特有の事故として転倒・転落があります。この事故が起きてしまうと多様な後遺症で本人が苦労しますし、職場も労災で大変です。転倒・転落の防止のためには、職場の環境改善対策以上に、本人の股関節周りの筋力の衰えをいかに防止するかが重要です。片足で靴下を履くといったような、開眼片足立ちという運動を続けるだけで、事故防止に大いに役立ちます。
そもそも予防とは、健康関連因子と作業関連因子の両面から取り組まなければなりません。この予防対策を各年代に応じてとりくむ「エイジマネジメント」という考え方を広げていきたいと思っています。
─日本の労働市場は米国などと比べ流動化していませんから、定年制廃止は、労働者をいつまでも抱え込むことになりかねないと、抵抗する企業も出てくるのではないでしょうか。
神代:どちらが鶏でどちらが卵かというような難しい問題ですが、それは、評価システムがきちんと構築されていないせいでもあるのです。若いころから、その仕事に対して求められている水準が明示され、自分の能力がマッチしているのかしていないのかが把握されていないから、流動化も進まない。
成果主義や目標管理制度が形としては導入され、能力給という言葉も広まりましたが、職務能力を評価する根本のシステムが構築されているとは言えません。そのためのツールを開発していくことも必要でしょう。
(聞き手・構成/Wedge編集部)
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。