2024年11月21日(木)

中国メディアは何を報じているか

2014年12月16日

軍の警戒感を示すドキュメント「較量無声」

ドキュメンタリー『較量無声』。下の画像の訳は、「学者や官僚の買収を図り、親米派の育成を図っていると警戒感を露わにしている」
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 彭光謙少将も王教授の主張に我慢ならなかったようだ。彼は反腐敗とカラー革命をごっちゃに論じることはできず、腐敗は取り締まらなければならないが、カラー革命も取り締まらなければならないと主張し、反腐敗だからカラー革命に対して批判せずに、抑えないということではなく、二つは別物だと強調する。一体全体、どちらの視点が支持されているのか。誰が中国を転覆させるのだろう。

 こうした論争から中国共産党政権がいかに強い危機感を持っているかが窺えるが、こうした危機感、特に軍が抱くパラノイアとも思えるほどの危機感は、2013年6月に軍の最高学府である国防大学が中心となり、軍総政治部保衛部、総参謀部三部、中国社会科学院、中国現代国際関係研究院と共同で制作した「較量無声」(声なき戦い)というドキュメントを想起させる。ドキュメントの内容は一言で言えば、中国の転覆を狙う米国の策略に警戒せよというものだ。

(上)欧米が国の転覆を図っていると主張する国防大学の王朝田副校長
(下)情報売買、売国行為が横行と指摘する于善軍少将、後に更迭される
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 このドキュメントは軍の兵士教育用映像として編集されたようだが、中国国内のネットに出回るとすぐに削除された。論争の拡大を恐れたためか、もともと内部用だったために社会に流通すると不都合だったためなのか、当局が削除した意図は不明であるが、一度流出してしまったことから海外のサーバーなどを使っているためか、まだネット上に残っている(中国国内でのネット閲覧はできないようだ)。

 「較量無声」が強調したのは、政治、文化、世論・思想、組織、政治干渉・社会の浸透という5つの点からの外部からの浸透の脅威だった。こうした外部勢力による浸透の主なアクターは米国であり、米国は様々な機会を通じて米国の価値観を中国に植え付けることを試み、各レベルの権力機構においても欧米的な思考化が進むように陰謀を巡らせ、米国の望む通りに中国が考え行動するようにしようとしているというのだ。また様々な手段を講じて指導者層を誘惑し、籠絡して腐敗させようとしたとしている。


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