2024年11月26日(火)

Wedge REPORT

2009年7月27日

 手作りで高級化粧箱を作る伊藤紙函店も仙北信組に救われた企業の一つです。

 「大手の安売り攻勢で売上が落ち込み、3期連続赤字で繰越欠損が400万円になった。機械も自宅も全部売り払って、勤め人でやり直そうと仙北を訪れたら、理事長がちょっと待てという。いろいろ話を聞いてくれて、1週間後に本店に呼ばれた。すると全支店長が揃い踏みで再生プランを説明してくれた。すでに各支店の取引先で紙箱を買ってくれるところがないか調べてあり、何十社も紹介してくれた。涙が出て止まらなかった」と伊藤智浩社長は語ってくれました。

 若林氏が取り組んだのは中小企業支援だけではありません。多重債務者向けのおまとめローン「まとめてハッピー!」(金利9.8%)や、育英学資ローン「めざせ大物!」(長期プライムレート+0.5%)といった商品を職員と一緒になって開発し、地域経済の疲弊で自殺する多重債務者や進学困難者が増加している状況になんとか歯止めを打とうとしてきました。もちろん、こういった取り組みは、どれも短期的な収益を悪化させるものばかりです。

 しかし、こういう経営姿勢が、この経済危機に求められているのではないでしょうか。若林氏辞任の噂を聞きつけ、県中小企業家同友会の有志など、エリア内外からいくつも続投を求める嘆願書が届けられたことがそれを示しているでしょう。

 ただこういう経営姿勢は、グローバルスタンダードに準拠して「自己資本比率4%」を一律にあてはめ、健全性を追求する監督行政のあり方とは相反してしまうのが現実です。無気力な銀行ばかりが生まれる一因に、ルールや金融システムの問題があるといえるでしょう。

 本稿はWEDGE8月号の特集「こんな銀行はいらない」のダイジェスト版です。WEDGE8月号では、加藤秀樹氏(構想日本代表・東京財団会長)による論稿「グローバルとローカルが共存 金融は『世界二制度』に」など、より深くこの問題を掘り下げておりますので、ぜひご覧ください。

「WEDGE」2009年8月号

 

 

 

 

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