2024年11月22日(金)

中国メディアは何を報じているか

2015年2月5日

 マレーシアの警察当局は昨年、ISILへの加入を試みたマレーシア人46人を拘束したとしており、現在、3月の国会でテロ対策の法案を可決に向け準備が進められているという。中国当局は中国人がマレーシアに密入国している状況をある程度は把握しているだろうが、公の場では明らかにしていない。それは中国自身が過激派による被害者でありながら同時にテロ活動に参加する人材の供給国になっているという現実に対するジレンマを示す。中国外交部の報道官は具体的事案については関係部門に聞けと直接回答を避ける。関係部門とは警察としての公安部や秘密警察としての国家安全部だが、こうした外事警察部門が具体状況を公表することはなかろう。

多発する中国南部での騒擾事件

 中国から国境を接するタイやベトナムに行くため、「過激派」たちは新疆ウイグル自治区といった中国の西部から雲南省や広東省、広西チワン族自治区といった南部に移動し、そこから東南アジアに抜ける。この際に密出国を手伝うのは「蛇頭」と呼ばれる地下組織である。「蛇頭」のガイドにより、陸路、水路を伝わってベトナムやミャンマーに赴き、そこからタイやマレーシアを経由してトルコに向かう。

 昨年3月に起きた通り魔事件は中国のみならず、日本でも大きな注目を浴びた。3月1日、雲南省昆明駅で十数人の黒服をまとった男女が行きずりの人々に刃物で襲い掛かり、29人が死亡し、130人あまりが重軽傷を負った。犯人は黒い旗(ISILの旗に似た)のようなものを持っていたとも伝えられた。

 こうした事件を受け、国境近辺では近年警戒が強化されており、簡単に越境ができなくなりつつあり、取り締まりの警察や治安部隊と銃撃戦が発生する事態も起きている。1月18日夜、ベトナムとの国境の町、広西チワン族自治区の凭祥市では密かに出国しようとしていた新疆ウイグル自治区出身者が警官隊と衝突し、2人が射殺されるという事件が起きたばかりだ。

 広西チワン族自治区公安庁には反テロ総隊が設けられているが、この総隊が主催する反テロ宣伝活動において14年に同自治区で宗教絡みの原理主義者の検挙数は全国の半数を占め、凭祥市での検挙者は広西での3分の1を占めたと明らかにされた。実に同市での検挙者数は全国の6分の1を占めることになる。中国公安部が明らかにしたところでは、ベトナムやミャンマーとの国境での密出入国事件が急増しており、昨年1年で132件、関係人数は866人に上ったという。このほとんどが新疆出身者だった。

東南アジア各国で数百人規模の密入国者を検挙

 カンボジアやマレーシア、タイでは2009年以降、新疆ウイグル自治区出身者が拘束される事件が相次いでいる。マレーシア警察は昨年10月、クアラルンプール郊外のマンション2部屋で新疆ウイグル自治区からの密入国者155人を拘束した。女性37人と子供76人を含んでいる。当局はこの密入国者たちがISILに参加しようとしていたか否かは明かしていない。


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