2024年4月26日(金)

中国メディアは何を報じているか

2015年2月5日

 タイでは南部のソンクラー県で昨年3月、身元不明の人々220人以上(うち男性78人、女性60人、児童82人)が拘束された。彼らは当初トルコ人を名乗ったが、後に新疆ウイグルからの密入国者と判明した。彼らの中に婦女、幼児がいたこともあり、米NGOは彼らが帰国すると迫害に遭う可能性が高いとして帰国させないよう求めた。

『亜洲週刊』最新号(2015年2月第6期)はISISが「アジアを狙撃」と湯川、後藤両氏の人質事件を特集

 こうした報道からみると中国からの密入国者がイスラム過激派に属し、テロ活動と関わりがあるとは断言できない。しかし、ISILに同調して渡航するものも少なくなく、東南アジア諸国では既に帰国してISIL支援グループを国内に組織する動きがあるのも事実だ。『亜洲週刊』2月号はISILがアジアに焦点を定めたと特集を組んでいる。東南アジアのイスラム諸国は単にアジア各国からISILへの人員供給源となっているだけでなく、分派組織を国内に組織する動きもあるのだ。

これに対して中国や東南アジア諸国は対策を怠ってきたわけではない。中央アジア諸国とは中国はテロ対策の共同演習を頻繁に実施しており、二国間関係での演習に限らず、上海協力機構(SCO)の枠組みでも協力が進められている。東南アジアでは中国はメコン川流域のラオス、ミャンマー、タイと共同で国境警備隊による巡視を強化しており、2011年から共同巡視を定期的に行ってきた。共同巡視は1月末までに既に30回を数える。

2005年のヨルダンでのテロでは
中国軍人3人が犠牲に

『国際在線』2005年11月12日
送還された兵士の遺体の出迎え

 国内の治安維持とテロが密接に関わるという複雑な国内情勢に加え、中国人が海外でテロに遭うことも多くなっている。今回、後藤健二さんの解放条件としてISIL側はヨルダンで収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放要求を出した。リシャウィ容疑者は2月4日にヨルダン政府によって死刑が執行されたが、このリシャウィ死刑囚が逮捕されるきっかけになった夫とともに企てたアンマンのラディソン・ホテルでの自爆テロ事件(2005年11月)では56人の死者と300人以上が重軽傷者を出した。そしてそれには中国の軍人3人も含まれていたのだ。

 この軍人とは国防大学から研修目的でヨルダンに派遣されていた総後勤部傘下の衛生部所属某局の副局長である潘偉大佐(44歳)、総政治部所属の張康平大佐(42歳)、中央軍事委員会弁公庁所属の孫靖波大佐(41歳)であり、姚立強大佐(42歳)も大腿骨骨折という大けがを負った。当時の胡錦濤国家主席はテロを激しく非難する声明を出し、中国政府は3人の遺体送還に際して帰国歓迎式典を行い、国防大学では追悼式が大々的に行われた。

 リシャウィ死刑囚の釈放要求によっておぞましい過去の記憶が再び呼び起され、ISILによるテロの脅威を再認識させる事になったが、中国は米国国務省が発表した対ISILの「有志連合」60カ国のリストには入っていない。


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