2024年12月23日(月)

世界の記述

2015年6月1日

 イランと国連安全保障理事会常任理事国5ヶ国にドイツを加えた6ヶ国(以下、P6と略す)とのイラン核開発の交渉は、4月2日、枠組み合意に達した。4月22日からは6月30日を期限とする「最終合意」に向けた次官級交渉も開始している。

 米国とイランは枠組み合意後、それぞれが抱える国内反対派を納得させる必要からか双方が自国に都合の良い解釈で説明をしている。例えば、米国がイランによる全合意事項の順守の確認後、制裁は停止されるもののその後違反があれば復活できるとしているのに対して、イランは最終合意後、直ちに制裁が全面解除されるとしている。また米国がイランは国際原子力機関(IAEA)による全ての核関連施設での抜き打ち査察に同意したとしているのに対して、イランは軍事施設については当然対象外であると主張している。

 つまりイラン核交渉は最終合意に向けまだまだ紆余曲折が予想されるのである。しかし、翻って考えてみれば、イランは既にこの交渉で明確な勝利を収めていることが分かる。なぜならば、イランとの核交渉の開始された約10年前時点での米欧等の立場は、(1)イランのウラン濃縮の権利を認めない、(2)イランがウラン濃縮能力を持つことを認めない、という極めて厳しいものであった。

 だが枠組み合意では、イランのウラン濃縮の権利を認め、イランがウラン濃縮能力を持つことを追認している。しかもイランとの交渉の過程では、地下に設けられたフォルドゥ核施設の解体やウラン濃縮遠心分離機の破壊等も要求していたはずである。ところが結果的には、イランの既存の核関連施設はIAEAの監視下に置くとの条件付きながらそのまま無傷で残されることとなった。また約1万9000基の遠心分離機も稼働数を一定期間に亘り約5000基に制限するが、残りはIAEAの監視下に置かれ将来の使用に道を残す形となっている。


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