チュニジアの首都チュニスのバルドー博物館で3月18日、イスラム過激派による銃撃テロ事件が発生し、襲撃犯2人を含む合計24人が死亡、約50人が負傷した。「アラブの春」の発生国で、政変後の民主化が順調に進む安定した観光立国とのイメージが強かっただけに衝撃がはしった。
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しかし、中東・北アフリカ情勢を丹念に追う専門機関から見ればチュニジアもテロ・リスクを内包する国家であった。実際、同国政府は昨年初以降、シリアやイラクでの戦闘経験者約400人が舞い戻ったとして、数千人の兵士を投入しイスラム過激派掃討作戦を展開していた。しかもシド首相は事件前々日の3月16日、「首相に就任した本年2月以降、約400人の聖戦主義者を逮捕した」と語り過激派の脅威が存在することを明らかにしていた。また前日の17日には内務省が「治安部隊はリビア行きを勧誘していた22人を逮捕した」「テロ細胞はリビアで訓練キャンプを運営するチュニジア人聖戦主義者と協調していた」と発表し、リビアの過激組織の影響が自国に及んでいる実態を説明していた。
チュニジアにとっての悩みは、東西隣国との国境地帯が砂漠であるため従来から密輸業者などが自由に出入りしてきたことだ。しかも「アラブの春」でカダフィ政権が崩壊した東の隣国リビアでは、今でも東西の2つの政府が戦闘を繰り返すなか「イスラム国(ISIL)」の支部が結成されている。また、リビアは内戦中に大量の武器類が周辺国に流出したことで知られる。
西の隣国アルジェリアでは「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」がテロを繰り返してきた。2013年1月にはAQIMの派生組織による天然ガス処理プラント襲撃事件が発生し、日本人10人を含む38人が犠牲となっている。本年3月23日にも、ISIL関連組織によるテロを警戒し首都東部のカビリ地区で道路建設事業に従事するトルコ人作業員を丸一日避難させる警戒措置を講じている。