教科書などでおなじみの歌壇史の大立者、藤原俊成と定家父子。また定家の子、為家も単独で勅撰集(天皇または上皇の命で編まれた歌集)の撰者として選ばれるほどの歌人だった。そんな文学史に輝くスターたちを先祖にもつのが京都・冷泉家〔れいぜいけ〕。歴代が、宮廷や武家の歌道師範を務めた由緒ある家柄だ。
京都御所にほど近い、現存最古の公家住宅である冷泉家の蔵には、800年という歴史のなかで集積されてきた貴重な本や古文書が奇跡的に残されている。実は、それらの書物は、保存継承のために、昭和56(1981)年に財団法人冷泉家時雨亭〔しぐれてい〕文庫に移管され、調査と並行して平成4(1992)年から「冷泉家時雨亭叢書」として写真版の複製が刊行されてきた。
今回の展覧会は、この「冷泉家時雨亭叢書」が完結したのを記念して開かれるもので、藤原俊成自筆の「古来風躰抄〔こらいふうていしょう〕」や定家筆「古今和歌集」、定家自筆の日記「明月記」など国宝5件と、重要文化財400点余りが一挙に公開される。
700~800年も前に書かれた俊成・定家・為家親子3代の著書が、写本ではなく自筆本で、しかも直系の子孫である冷泉家に伝わっているというようなことは、世界的にみても例がないという。このほか、今回は冷泉家に贈られた宸翰〔しんかん〕(天皇の書)も披露される。宮廷文化の雅な香りを感じ取ってみたい。
冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展
東京都台東区・東京都美術館(山手線上野駅下車)
〈問〉03(5777)8600
http://www.tobikan.jp/
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