チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年12月30日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

危機感強まる指導部 打ち出した経済の方向性とは

 私自身、胡錦濤指導部の時代には、中国が抱える問題の大きさに対して指導部の示した危機感が薄すぎると中国の未来を悲観していたが、習近平の時代になり1日500人以上というペースで党員を処分する取り組みなどに接すると、いまの指導部が強い危機感を抱いていることが理解できた。またそれは国民にも伝わり、社会の空気を変える作用もある程度は果たしている。

 指導部の危機感は、秋に行われた中国共産党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で発表された「13次5か年計画(=13・5)」にもくっきりと刻まれている。

 今後5年間の中国経済の方向を決めた「13・5」の特徴は、以下の5つのキーワードで理解することができるとされる。

 ①創新(イノベーション)

 ②緑色(エコ・環境)

 ③協調

 ④開放

 ⑤「共享」(利益の平等分配)

 なかでも焦点は⑤の「共享」とされるが、そのターゲットは貧困である。より具体的には中国になお残る7000万人ともいわれる極貧層(1日1ドル以下で暮らしている人々)があるとされるが、これを5年後に撲滅するというものだ。

 実は、習近平は「13・5」の前から脱貧困については積極的に言及してきていた。現状、貧困の実態に関するニュースがメディアに多く見られるのは、それが一つのトレンドになっているからなのだ。

 目下のところ指導部の意図がどこにあるのか――「貧困層のかさ上げによって新たな発展の余地としようとしているのか」、それとも「社会の安定のためには避けられない優先事項」と考えられたのか――判然とはしない。しかし、少なくとも分配を見直すという方向には向かうことが予測されるのだ。

 この「13・5」を受けて、12月14日に召集された党中央政治局会議では、より具体的に2016年の経済運営のための“10大任務”が確定された(新華社)という。

 ここでそのすべてを記すことはできないので要約を並べて見たいが、特徴は①に個々人のイノベーションを推進し新たな発展につなげることを掲げ、②に企業の淘汰を促しつつ、③社会保障や税金、電力といったコストを低減してゆくとしている。また、④として不動産に関しては在庫処理に注力しながら出稼ぎ労働者の都市への定着を推進し不動産の取得を促すことを打ち出し、金融では⑤として効率の良い資金供給のためのインターネットの活用を掲げ、同時に不良債権処理でのハードランディングを避ける⑥としている。さらに、⑦で国有企業改革、⑧で国民生活、⑨で一帯一路構想の推進、⑩で外資との協力と知的財産権の保護を打ち出しているのだ。

 これらが中国が今後取り組む優先課題だということだ。逆から見れば、中国がいまどんな問題を抱えているのかが良く伝わってくる内容でもある。

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