2024年7月27日(土)

WEDGE REPORT

2016年1月10日

健康志向で浸透する日本食

 5年前に発表された2011年度のランキングには、日本の食材が多く入っていたが、2016年度には入っていない食材が多い。それは、人気がなくなったということではなく、アメリカで広く浸透し、当然のものとして使用されるようになった感があるからだろう。たとえば、枝豆、海苔、酒などは米系のスーパーでも販売され、神戸牛は、米系の高級レストランなどで取り扱われるようになっている。

 それでも、「100位」「200位」などと聞くと、それほど大したことがないように思えるかもしれない。しかし、ランキングの対象は、食材、ドリンク(アルコールを含む)、料理、テーマ(グルテンフリー、オーガニックなど)で広範囲にわたる。しかも、世界の食が集結する移民の国だけに、ランキングの対象は計り知れない。「ランクインすることは、アメリカ人に認知されていることを表わしている訳で、それ自体がすばらしいこと。日本食がアメリカ人に受け入れられているのは、健康的だという理由が大きい」。こう話すのは、業界紙「Japanese Resutaurant News(ジャパニーズ・レストラン・ニュース)」の社主で、編集長のディビット・工藤氏。

ロサンゼルスの寿司屋「Akatora」の内装。寿司屋とは思えぬほど洒落ている

 それでは、これらを扱う実際のレストランの様子をみてみよう。まずは、2016年度のトレンド63位に入った「エスニックに影響を受けた子ども用の料理(タコス、テリヤキ、寿司など)」から。「これまで、大人たちが外食したいと思う多くのレストランでは、子ども用のメニューが少なかった」。こう話すのは、ロサンゼルスの寿司屋「Akatora(アカトラ)」の経営者、ニック・リン(Nick Lin)氏。しかし、今では、大人たちのニーズに応えて、野菜や果物を中心にしたり、グルメフードやエスニックフードも出すように。

「Akatora」で提供される「Kids Boat」。枝豆からヤクルトまで日本食材が盛りだくさん

 たとえば、前述の「Akatora(アカトラ)」では、子ども用にアボカド、キュウリ、カニ蒲で作ったカリフォルニアロールを含む「Kids Boat(キッズボート)」を提供する。このキッズボートには、2011年度のランキングで155位になった枝豆も含まれる。「これは、顧客の5%にあたる子どもたちのほとんどが頼む」とリン氏。「メニューは、寿司をはじめ、ヘルシーをテーマに考案したものなので、親も安心して頼めるようだ」。ちなみに、同店は、地域柄、中上流階級の子ども連れが多く、1回の食事で1人平均20~30ドル(約2400円~約3600円)を使うという。

グラスに入れられた抹茶。鮮やかなグリーンが目を惹く

 次に、取り上げるのは、66位にランクインした「特産のアイスティ(抹茶など)」。現在、アメリカで抹茶がトレンドになっている理由を、抹茶を販売する企業「Breakaway Matcha(ブレイクアウェイ・マッチャ)」の経営者で、自身がシェフでもあるエリック・ゴーワー(Eric Gower)氏はこう話す。「鮮やかなグリーンが目をひきつけること」。これは、インスタグラムやフェイスブックなど、ソーシャルメディアで拡散したいと思える美しさだ、とゴーワー氏。

 また、ヨガや瞑想を教えるインストラクターたちの間で、抹茶は、スピリチュアルな飲み物だと捉えられている。「彼らは、受講者たちに抹茶を飲むように勧めている様子」。さらに、シリコンバレーの多くの企業では、従業員たちに抹茶を勧めているという。「たとえば、グーグルでは、活力がみなぎり、コーヒーよりもカフェインが少なくてヘルシー。また、カフェインによって頭が冴えるため、仕事の効率化につながるという理由から、1日一杯の抹茶を飲むように人事部が勧めている」。


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